オレ達の日常=SIDE Y=

68

誠士は、両手にイカヤキとたこヤキを持って神社へと向かう砂利道をざくざくと歩いている。
最初は誠士から電話きたときには、初詣も面倒くさいなと思っていたがこうやって毎年一緒に新年を祝うっていうのも悪くないと思う。
トールは、俺のちょっと先をぶらぶらと歩きながら、露店の中を目で物色している。
欲しいものがあるのかなとか、トールのことが気になって仕方ないのはもう癖になっている。
「康史も食う?」
目の前にぬっとたこ焼きを出されて、俺は誠二のたこ焼きを口に運ぶ。
「さんきゅ」
「ったく、朝から盛っててよく体力もつよなあ。にしても、電話できかせんのは趣味悪いけど」
イカを齧りながら横目で恨めしそうに誠士は恨めしそうに俺を見やる。
「電話に出れる状態じゃないって、あんだけ無視したのにやめねえのが悪い」
肩をすくませて、露店の焼きそばを大盛りで買っているトールを待ちながら誠士のたこ焼きをもうひとつつまむ。
「そうだけどよ……。つーか、トールのアレ、エロイ声だよな。焦ったぜ」
「腰にクルだろ?あげねえけどさ」
イカを食べている誠士の脛を軽く蹴りながら、にやっと笑ってみせる。
電話口で焦っている様子は凄くわかっていたから、何考えたかは知りたかったところだ。
「いらねえよ。だから、俺にはそーいう趣味ねえっての」
「何?喧嘩してンのか」
やきそばを頬張ってもぐもぐしながら、トールは首をかしげて俺たちを見下ろしてくる。
喧嘩してないけど、トールの姿が本当に可愛い。
大きな熊が捕食しているようだ。
「ケンカじゃないぞ、ちょっとじゃれてただけだからな」
トールの肩をたたいて、ヤキソバの上に誠士のたこヤキを乗せてやる。
別に、電話で声を聴かれたとか言っても、トールは恥ずかしがったりもしないだろうし、怒りもしないだろう。
それがわかっているので、特にここで言い合いの内容を言う必要はない。
「ふうん。あんま目立つと、東高のやつらきちゃうから気ぃつけろよ」
オマエに言われたくはない……が、本音である。
いい合いをしなくても、充分トールがいるだけで目立ってはいるのだが、本人はそれには気がついていないのであろう。
銀色に輝く髪と、しっかりした大きな体つきはそこにいるだけで目をひくものだ。
「今朝は、それほど体力消耗してねえの?」
「ん?」
「朝からセックスしてきたんだろ」
俺らの間に遠慮なんてないんだろうけども、誠士の言葉は本当にズバズバ率直に問いかける。
率直くらいじゃないと、トールに話は通じないんだろうけども。
トールは、うーんと唸ってやきそばを掻きこみごっくんと呑み込んでから、誠士の顔を見返す。
「消耗してねェように見えるか?」
「どうなンだ?」
問いかけに問いかけで返されてトールは自分の体を軽く叩いてみせる。
「抜かず5回かなァ。最近、ちっと体慣れてきたみてェなンだよねェ」
にっと笑って自慢げに胸を張る。
……それ、自慢するとこなのか?
俺も誠士も思わず顔を互いに顔を見返していた。
「脳みそは沸騰しちまってよく覚えてねえんだけどさァ。ま、キモチイイからいいんじゃね」
からっとあっけらかんと言われてしまい、思わず俺はあっけにとられていた。
恐るべき順応性だろうか……。
最中の淫らに蕩けた表情を思い返すと、それもそうかと思い当たる。
あれは、完全に意識がすっとんでる様子だった。
それでも、キモチいいといってくれるのは、最高に嬉しい気がする。
っと、初詣だしそこは煩悩をよそにおいておいたほうがいいような気がする。
「慣れるものなんだな……、まったく想像できねえけど」
「まあなァ、最初は体の中バットでぶん殴られたくらい痛くてしょうがなかったけど、そのうち慣れる」
「まあ、ある意味バットだもんな」
感心したように頷いている誠士に、なんとなく怒りすら沸きあがってくる。
こいつ面白がっているな。

そんなこんなで、ガチャガチャ言いながら社へとたどり着いたので、一礼三拝のに習ってお参りをする。
横目でトールを眺めると、きっちりと参っているようだ。
こーいう儀式的なことはしっかりしている。
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