オレ達の日常
32
ジャンパー越しの風がキモチイイ。
腕を回す腰も、凭れる背中もたまんねえキモチになって、ぎゅうっと抱きつく。
頭ン中、ほわほわっとしていて酔っ払っているのもわかる。
オヤジにヤスが、俺をくださいって言ってくれたって聞いて、本当にうれしかった。
普通の人ならビビルようなオヤジにそんなことを言ってくれたのだ。
そんだけでも、本当に嬉しい。
普通じゃできねえから、俺は俺でけじめつけるつもりだったのだ。
「トール、ついたぞ。ほら、降りて。だいじょうぶか?俺、トールをかつげねえから」
「ん。へへへ、らいじょうぶあって」
ふらっとよろめきながらも、バイクから降りてマンションの壁に寄りかかる。
「ったく、もー、あんまり可愛いと襲っちゃうからな」
ヤスがバイクのキーを抜いて俺の前にやってくると、俺は凭れるようにヤスの腕を掴んでマンションのエレベーター前まで歩き、
「いーぞ」
ヤスの肩にあごを乗せてちゅっと頬に唇をくっつける。
「ったく。そーんな顔で誘いやがって」
ヤスは舌打ちすると、ぐっと俺の腕を強く引っ張りエレベーターに無言で乗る。
ンー 怒らせたかな。
「ヤス、おこった?」
「ちげえ。自制の限界だっての。」
エレベーターから降りて、せわしなく部屋の鍵を開けるとヤスは俺をぐっと引っ張りこんで鍵を閉める。
「トール。可愛い、たまんない」
ぎゅうっと強く抱きつかれて、俺は安心して力を抜く。
あたまの中もぐるぐるして、キモチいい。
「ベッド、いくぞ」
俺のジャンパーを脱がして、腕を引くヤスの声がかすれていて、セクシーに響く。
これから抱かれるのかと思うと、腰が熱くなってくる。
性的欲求なんて、ヤスと付き合う前は何もなかった。
ナズと付き合った時も、そんなにやりてえとかはなくて。
でも、今は違う。
交わりたいと心から、願う。
どさっとよろめく俺の体を押し倒して、ヤスは俺のベルトを引っこ抜いてジッパーを下ろす。
期待に膨らんで先端を濡らしている浅ましいペニスに表情を緩める。
「誕生日にって言ったけど、今日、開けていい?ピアス」
「いーぞ」
そんなことも言っていたなと、思い出す。
何かの記念日にしたいから、誕生日にって言ってたっけ。
「今日は、俺とトールの婚約記念日だからな」
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