オレ達の日常
3
曇っていた天気も少しづつ青い空の断片を見せ始める。
教室に戻ろうとは思ったものの、なんとなく二本目のタバコに火をつけていた。
噂とかは、ハッキリ言ってどうでもいい。
人がどう思っていようと、そんなこと気にしたことは今までにない。俺は俺だし、俺の中のルールがそれで変わることはない。
ナズナがそれでどう思っても俺には関係ない話だ。
元カレが男と付き合ってるって言われて、ナズナもいい気はしないだろうけど。
そこは、ナズナに我慢してもらうしかねえな。
付き合ってるのに、付き合ってないって弁解するのもおかしいし、俺は嫌だ。
「トール、眉間に皺寄ってるぞ。考え事なんか似合わないんだけど」
気がつくと、ヤスが俺の目の前に立って俺の眉間を指先で撫でてくる。
まったくもって気がつかなかった。
そんだけ気持ちがとられていたのかもしれない。
思わずグイッとその腕を掴んで、ヤスの顔を睨みおろす。
「ヤス、コニシ振るのに、どうして俺の名前出したンだァ?」
ヤスは驚いたようにちょっと眉をあげて、面倒そうな表情をありありと見せた。
普段はしない表情なので、俺がそんな細かいことを気にする性格ではないから、質問の内容に驚いているのだろう。
「……ああ……。”好きな子できた”で、納得してくれなくてね。到底敵わない相手だって教えてあげたんだけどね。……討伐されちゃったらどうしようとか、らしくねえこと考えてたのか」
どう逆立ちしても考え付かない理由を、冗談交じりにため息をつきながら質問してくるヤスに、俺は掴んでいた腕を軽くひねりあげた。
大体こいつが、無駄に顔がいいのが悪いのだと思う。
こいつがイケメンでなくとも、俺が強姦したといううわさはたったかもしれないが、討伐隊とかは結成されないに違いない。
「そうか。……別にどーでもいいんだけどな。ウワサじゃ、俺、強姦魔らしいぞ」
ぼそっとつまらないというように答えを返すと、ヤスは俺の顔をじっと覗き込む。
硬派で通している自分がそんな卑怯なまねをすると思われるのは面白くはない。
人にどう思われるかなんて、俺には大したことではないけれど、それが気に食わないのは確かなのである。
「逆なのにな。それで不機嫌な顔してるわけか」
ヤスはちょっと笑いながら、俺が掴んだ腕と反対の手で、俺のシャツの上から乳首をゴリゴリと指先でこね始め、俺は再度くわえていたタバコを落とした。
「って……っ、ナニ、こんなとこでドコ触ってるんだ」
噛み付くようにヤスに怒鳴りつけると、意地の悪い表情を浮かべて、手の動きは止めずに言葉を返す。
「俺は強姦魔だからね、学校でヤったことないなあって思ったらついつい」
指の動きが円を掻く様にして大胆になり、腰からびりびりっと疼くような熱が這い上がってくる。
下半身もきつくなり立っていることも厳しくなって、俺は空いている手で支えるようにフェンスの網目を掴む。
こんなトコでヤられるわけにはいかない。
静止の言葉を吐いて、腕を握っていた手を外して悪戯をする腕の方にを引き剥がそうと力を篭める。
「フザケンなよッ……ちょ…っ……待て……」
「だあめ。こんな誰もいないとこで、波砂と二人っきりになったお仕置きしなくっちゃね」
満面の笑顔で言ったヤスにぶるりと震え、俺は逃げ道を探すように視線をさまよわせた。
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