ただ一つの切望に
3
うっすらとしか記憶が残ってないが、強烈な快感に流されたようで、どうやらセルジュは俺とつがったらしい。
「俺はいいけどさ……。オマエ、気の迷いだったから解消とか言うなら化けてでるぞ」
ヒートはすっかり収まったようだ。
番の相手と期間中に1度でも交われば、収まるようになるって話だ。
薬の効かない俺には願ったり叶ったりだが、交わらないで放置されれば他の相手で代替できないし、ヒート地獄になり他の相手とも番になれないので、廃人まっしぐららしい。
運命の番じゃなければ、子供を産んだらぽい捨てなんて良く聞く。
運命の番……それは、俺には一生いないものだと諦めている。
「そんなことしない。安心してくれ。アンタが理性すっとんでるの分かってたのに、ゴメン」
真っ直ぐ過ぎる目を向けられて、別に廃人になってもいいとか考えていた自分に、何故か腹が立った。
「気にすんな、セルジュ。オマエが俺でイイなら、イイ」
「オレの母さんはαに捨てられて、奴隷商人から逃げたΩだ。気がおかしくなって死んだって聞いた。オレは、そんな目にアンタを合わせる気はない」
真剣な表情をされ、少しだけ気持ちが落ち着いてくる。
確かに理性はとんでだけど、俺はダメな相手に頷いたりはしない。
「わかったって。俺がイイッて言ったんだから、グダグダすんじゃねえよ。とりあえず、式はいつあげるか?デキ婚はイヤだぞ」
あんだけセックスしたんだから、もう孕んでるかもしれねえけどなと、冗談ぽく笑って言うと俺はセルジュの肩を叩いた。
Copyright 2005- (c) 2018 SATOSHI IKEDA All rights reserved.