ただ一つの切望に
2
何度となく注がれてもヒートが収まらず、流石に若いセルジュも体力が尽きたのか、俺のアナルに再び張形を押し込んで、電源を入れたまま抱きしめてくれている。
「……あ……ッッう……う……や…あああ」
喘ぎ声しか漏らせなくなった俺の頭を撫で、困った顔すらせずに背後から抱きしめている。
「普段が憎たらしい感じだからな、すげえ可哀想なのが可愛い」
悪戯をするように、唇に指を這わせて俺が吸い付くのを楽しみ、亀頭をくにくにと弄りながら責める。
尿意に似た感覚に、もじつきながら俺は首をふる。
「……ぃや、あ、あ、も、もれひゃ……う…あっう」
「漏らしてアンタのもっと情けない姿見せてよ。なんか、αがΩに夢中になる気持ちが分かっちまったかもな」
尿道に爪をくい込ませ、キリキリと強く刺激されグイッと奥を張形で突き上げられると、プシャップシャッと透明な飛沫が勢いよく飛び出す。
「イッ……でひゃ、う……ヤら……ッく」
こんなことは初めてだ。
とめどなく溢れてしまい、止められず泣くことしかできずにしゃくりあげる。
全身が弛緩してビリビリと震える。
「約束には早いけど、今すぐアンタをオレのものにしたい」
俺はこのセルジュという部下に、次のヒートまで抱きたい気持ちがあるなら、噛んでいいとは言ったのだ。
噛まれて番になれれば、ヒートは収まる。
苦しみから逃れられる。
だけど……。
「……ッ、ッ、あ、ヤだ」
「なんで?」
何故かって言われたら、俺には拒む理由なんてなにもない。
子供も欲しいし、ヒートは苦しい。
でも、そんなことは関係なくて。
「……ッ……おれ……を、すきだって……きいてねえ」
そんなの子供を産むだけなんだし、どうでもいいはずなのに、だけどとても大事なことだった。
セルジュは驚いたように目を見開いて、しばらく俺を眺めると口元を緩めてふと笑った。
「オレは、アンタのことが好きだよ」
ズルッと胎内から張形が引き抜かれて、背後から抱かれたまま脚を腕に絡めとられて開かれると、屹立した肉にぐぶりと貫かれる。
まるで麻薬を打たれたかのように、ぐにゃりと視界がゆらいで身体中が歓喜する。
「好きだよ。だからオレのメスになれよ」
体の重みに深々と抉りあげられ、ただひとつだけ欲しかったものが手に入ったことを知る。
諦めていた。
好きだと思われて繋がれる相手なんて、この世にはいないと決めてた。
だから俺は全部をコイツにくれてやろうと決めた。
「ッあ、ああ……ッく、ッメスに……してッ、かんで……くれッ」
脚を開かれたまま、腰を掴まれてガツガツと揺らされて悲鳴をあげたところで、項を舐められガリッと犬歯をたてられた。
頭の中心から背筋まで突き抜ける感覚に、俺は捕食されたように絶頂して痙攣を繰り返し、意識を闇へと奪われた。
「ッあ……?!」
目を開くとすぐ近くに部下のセルジュの顔が見え、俺は驚いてベッドから起き上がった。
頭がいてえ。
なんでコイツここにいるんだっけかと、考えてから、ヒートがすっかり収まっていることに気がつく。
変な重苦しさもないし、体も調子がいい気がする。
「起きたか、なんか食う?」
頭がモヤモヤしていて、なんだかぼんやりしている。
「あ、ああ……軽いもん口に入れたいかも。それにしてもセルジュ、いつきたんだ?」
ヒートの時は記憶が曖昧で、かなりトんでしまう。
一瞬セルジュは、目を見開き少し困惑したように俺を見る。
「覚えてねえ?」
じっと視線を向けられて、セルジュとまたセックスしたような覚えがして、俺は息を飲み込んだ。
感覚がいつもと違いすぎて、明らかに違和感があるから間違いない。
でももっと大事なことを、俺は忘れているようだ。
「やっぱりアンタ理性なかったよな。ゴメン、噛んでいいって言うから…………オレ、アンタを噛んだ」
セルジュは罰が悪いような表情を俺に向けて、躊躇いがちに人生を変える言葉を告げた。
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