Master

11

押し倒したガイザックの身体が酷く素直でケイルは驚いた。と、同時に彼の表情から伝わる感情に、嫌悪や拒否の色はないのを確認する。
ケイルは、半身剥き出しのガイザックのなめらかな肌にゆっくりと唇を滑らせた。
守るかのように背中にまわされるガイザックの腕の力加減の優しさに、ケイルは目を僅かに瞠った。15年前とまるで何ひとつ変わらない仕草と表情に、過去の情景が蘇る。

いつでも、俺や仲間を守ってくれていた。長くて大きな腕。こんなに綺麗だっただなんてあの時は思わなかったけれど。
王を殺したのも、俺を守るためだと後になって分かった。
何も言わなかったのは、彼の優しさだとケイルには分かっていた。
騎士だったガイザックが買ってきた男娼ということで、ケイルは都中の噂だったのだ。
王が好奇心を出して、ケイルを後宮に召し抱えると言ったところ、ガイザックは拒否して王の怒りを買い、ガイザックを身代わりにしようと襲い掛かったところ返り討ちにしてしまったそうだ。

何一つ理由は口にはしなかったが、すべて自分を守ろうとした結果だと思うと、ガイザックの一生を変えてしまったことにケイル申し訳ない気持ちになる。

柔らかい草の上で、肌に唇を落とすたびに快感に震えて開くガイザックの唇に誘われるように、ふっくりと膨らんだ唇を吸いあげる。

呪われた身体が求めて仕方ないのだろう。

ひくんひくんと腰を揺らめかせ、脚を開いて男を求めるように体を摺り寄せてくる。
どんなに辛いことかと思うたびに、心が締め付けられる。
それでも、ケイルはガイザックが欲しくて仕方がなかった。

「ガイザック……俺はこんなにも、何もできない……貴方に何も返せない」
ケイルはガイザックの頭を掻き抱き寄せながら、切ない声を絞り出すように訴えた。
グイッと引きおろしたガイザックのズボンの下で既に勃起して濡れたペニスを握り、ゆっくりと手のひらで包み込み上下させる。
「ン……ッ…ふ…ァ、、、ナ、、ニ……、そんなの……求めて………ね…ッ…ぇよ……ッン――ッううン」
ガイザックは理性が無い状態とはまったく違う反応で、与える快感に流されるのを必死に耐えようとする表情が、返って扇情的な色気を帯びていた。
脚を更にぐいっと開かせて、アナルを曝け出すと冷たい空気に触れて、そこはひくひくと蠢きながら牡を求めるように小さく口を開いている。

「貴方の為なら、俺は何でもできるのに……」

柔らかい肉の窄まりへと指を突き刺しゆっくりと掻き回すようにくるくると動かして、抜き差しを繰り返す。
まるで待っていたかのように、ガイザックの柔軟にぬめった肛口の襞は絡み付いて指を求めて熱を持ち始める。

「……ン…ッはァ…ァ、、、ッ、、、ケイル…ッ……ッァァ…ン、ケイル、ケイル」

腰を草の褥に押し付けつつ、ガイザックは背中をぐっと反らせてペニスからはたらたらと体液で腹部を濡らし乱れ始めた。
緩い動きと自分の体の動きをなんとか抑えようとするガイザックの葛藤の表情が、ケイルの血を沸騰させる。
誰よりも高潔で、誰よりも強靭だった貴方だからこそ、きっと自分にはこんなに刺激的に見えるのかもしれない。
肉壷へとゆるゆると押し込んだ指を増やし、ずぷずぷっと音を響かせて胎内を弄り回す。
柔らかく絡みつく熱い肉壁を擦って、指を曲げたり中でひねったり蠢かせる。

しゃくりあげ次第に快感に夢中になって腰を押し付け始めてくる様子に、ケイルは息を呑んだ。

「凄くいやらしい…………貴方を抱かせてください」
美しい肉体を絡みつかせて、欲しがるように潤んだ瞳と、名前を呼ぶ唇にケイルの理性のタガが外れる。
「ケイル…ッ……ケイル…ッン……ッァ…ァ、、、ぁああ」
指をアナルから引き抜き、宛がった熱を柔らかく解れた胎内へと埋め込んでいく。

熱く濡れた体をすべて使って、奥まで呑み込んでいく。

彼がこうなったのは、俺を守るため。
それなのに、当の俺が貴方を汚す。

柔らかい空気の中で、ケイルが吐き出すのは熱い思い。
背徳の気持ちにガイザックの体を抱きしめ、ぐぐっと深々と奥の隙間を埋めるように貫く。

ここ何日かで開拓したガイザックの弱い場所は、ケイルは既に知り尽くしていた。

「……ガイザック…ガイザック…ッ…愛してます……貴方…を…ッ」
ずっぷずっぷっと水音を響かせて前立腺を抉って、ガイザックのペニスの根元をぎゅっと締め上げて追い詰める。
まるでこの世にあるのが不思議なくらい美しい生き物。
呪われたからだ。

悲鳴のような声ををあげて、全身を揺さぶる姿はいやらしいのに、それでも酷く高潔に見える。
「貴方を愛してます……」
「ひッァ……ケイル………ああ………ッァァァ…ァああ…ッ」

放出できない苦しさにビクンビクンと身を仰け反らせて、ガイザックは腰を揺さぶりながら内部を痙攣させる。
ぎゅうぎゅうに締め付ける胎内と苦悶の表情に、ケイルは貪る様に夢中になっていった。


傍らで小石を転がすせせらぎが、耳を撫でるように聞こえる。

胎内へと何度も吐き出した精液が、ガイザックの開いたままのアナルから漏れ出して、草の上を汚していた。
漸く開放されたペニスからは、精液が勢い無く漏れ股間を濡らしていた。
散々に犯しつくしたのに、ガイザックのしっとりと濡れたからだは震えながらまだ足りないというように体を開いたままである。
意識を失っているのか、顔を涙と唾液で汚したままガイザックは目を閉じていた。

「ガイ………ザック……。ごめんなさい……」

ヤリすぎた自分に呆然とした表情で、ケイルは力の無い体を強く抱きしめた。

離したくはなかった。もう二度と……。

…………絶対に取り戻したいと、ずっと願っていた。


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