Master

3

一度体臭を嗅いでしまうと、それ以上は耐え切れなかった。

堅い砂の地面に腕を突き直し、ガイザックは尻をハミルへと捧げる様に掲げて、15年の歳月で教え込まれたように両方の太腿が地面につくほど開いた。
身を灼く熱を冷ましてくれるのであれば、屈辱も羞恥も全て受け入れられた。

死刑よりも重罪とされる罪人に与えられたこの呪術を用いた刑は、主人の殺害と共に自殺することも出来ない様な呪いであり、人の尊厳を徹底的に奪うようなものであった。
狂った方がましだと極限まで抗い続ける男たちもいたが、狂う前に肉欲に溺れて素に戻れなくなるか、狂いきって便所のように使われるかどちらかで、完全に死に至る者は少ない。

……だが……ガイザックだけは他の奴らとは違っていた。

刑が執行され、呪術を受けた直後に、ハミルの元にやってきた彼は、打ちひしがれても絶望もしていなかった。

"俺を殺さなかったことは多分、この国の不覚となると思うぜ。生かして飼い殺すつもりかもしれないが、そう上手くいくかな"

こいつを手に入れたいと思い、周囲の反対を押し切って後宮へと引き入れた。
先代の王を殺した大罪人。大陸一の剣士で、先代の王の側近の騎士であった彼は王を殺し逃亡すると、無政府組織の一団に身を投じた。
国の英雄が、大悪人へと転身したのだ。
子供の頃から憧れていた存在だっただけに、直ぐには信じられなかった。

ハミルは足元で欲情を露に乱れる性奴と化したガイザックを見下ろして、侮蔑に満ちた冷たい瞳で見下ろした。
ただのいやらしい肉奴隷となった男を見下ろすのは、子供の頃の羨望の気持ちを裏切られた憎しみでいっぱいだった。

「穴を……拡げるので……早く…ご慈悲を…」
目の前でガイザックは自ら腕を回し、開いた臀部の中心に指を当てて挿し込み、ぐっと指を外側に引いて内部の肉を広げた。
餌の前には自分で、尻の穴を広げて解す事はしっかりと教え込んである。
目の前で、挿し込まれた指は器用に中を掻き回して、粘膜の水分で回りに潤いを与えて解し始めたのを、無感慨にハミルは見下ろした。
「……見て…ください……ァ……ゥク…ン…」
クチャ、ペチャっと水音が響き始めて、ガイザックの鼻にかかった喘ぎが早くなってくるのが分かった。
一ヶ月も交わらなければ、通常の性奴であれば欲情に耐え切れずに狂ってしまっているところだろう。
少し苛立っているのは分かったが、それ以上を悟らせなかった。泣き喚く姿を見たいと思って、放置しつづけて様子を見ていた。

……そう思うこと自体が、気持ちを奪われているということなのかも知れぬが。

「いやらしい穴だな。もうべちょべちょにしてしまって……。ただ、ここだと外の兵士にも丸見えだ。お前はいいかもしれんが、私は好まない。寝所までその格好で這ってついて来い」
ガイザックを置き去りにして、奥の幕をあげて寝台のあるテントへと移ると、不恰好に体を引きずるように這って来るガイザックを眺めて不遜に笑った。

「どんなに綺麗な顔をしていても、その格好は無様だな。ガイ」
漸く息を切らせて這って来た砂まみれの体を見下ろして、ハミルは寝台にゆるりと腰を降ろした。
ガイザックはしっとりと汗に濡れた体に、砂がこびりつくのも構わない様子で指が熱を持つ胎内をまさぐり、ハミルの声も届いていないようであった。

「……もう…ァ…げんか…い……ァああ…どうか……」

指で拡げられた穴は開ききっていて、ものほしそうに懇願し震える体をハミルは無感情に見下ろした。
「そうだね。…………でも、私はお前の無様に泣きじゃくって私を欲しがる姿が見てみたいんだ」
物足りなそうな表情で、ハミルはガイザックを眺めて差し出された尻をつま先で軽くつついた。
ガイザックは、ハミルの言葉にぞくりと身を強張らせた。

一ヶ月もの長い間の放置は、<砂漠渡り>の疲れのせいで余裕がないのだと思っていた。
ただ……嬲りたい……だけ……か…。
妖しくなってくる思考に、ガイザックは考えることを放棄して体に巣食う欲情に身を任せた。
確かに、ハミルにとってみれば、ガイザックは父親殺しの大悪人である。苦しませて死よりも酷な扱いをしようというのは至極当然な話であった。

「……ァ……ァア…、……ハミ………ル様…」
ガイザックは足元に向きなおり、ハミルのつま先に口付けして懇願し、体の暴走についていけないのか、舌で少しでもハミルの体液を舐めとろうと舌を蠢かせ始めた。
今までに無いガイザックの痴態を眺めて、満たされる感情にハミルは目を伏せた。
呪術にかかった者は、主人の体液ならば例え排泄物でも悦び口にするという話を過大な伝承だと思っていたが、きっとそれは真実なのだろう。
恍惚とし足のつま先をしゃぶるガイザックを見下ろして、ハミルは、約100年振りの大罪人として処刑された男を観察した。

「このまま狂わせるのは勿体無い。もっとオマエで愉しみたいからな」

ハミルはガイザックの腰を掴むと、尻の肉を掴んで開いたアナルにまだ萎えたままの肉塊を押し込んだ。
「……ァア…、……ハミル…さ…ま」
「欲情すれば、見境も無く体を差し出す肉便所のオマエにはこれで十分だろう」
ハミルは、暖かなガイザックの胎内に、催した熱い小水をじょろじょろと流し込んだ。
「……ン…ァア――…っ、、、」
泡立つ程内部へと勢いよく注ぎ込まれる液体に、ビクビクと体を震わせて、硬く憤った欲芯から粘液を飛ばし、砂の上へと吐き出す。
引き抜かれたアナルからは、とぷとぷと注がれた体液を零し、ガイザックはぐったりと目を見開き砂の上に投げ出された。
「……これからは、性処理道具じゃなくて、私の便器として毎日使ってあげるよ。飢える必要もないだろう」
残酷な言葉が吐き出され、興味を失くしたようにハミルは寝台の上に横になった。

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