オレ達の日常

138※sideY

正直、驚いて声が出なかった。

まさか、東流から遊園地にいこうなんて言い出すとか。
朝から雪が降るんじゃないか、とか思ってしまった。
だいたい、人混みとか、こーゆー可愛い系のポップなとこは苦手な性分だろうし。
夏休みにあんなことがあって、流れた時にはもう2度と行かないだろうなと、半ば諦めていたのもある。

多分、報復とかでずっと俺が外に出てないのを気にしていたから、気分転換にと考えたのだろう。

東流の思考回路は単純だからわかりやすい。
だけど、分かっていたとしても、正直に嬉しい。
年甲斐もなく大はしゃぎしたいくらいだ。

急行直下する絶叫マシンに並びながら、いまは、2人で肉を齧っている。
幸せすぎて、ホントに嬉しい。
あの時の絶望感なんて、まるでなんだったんだ、って感じだ。

「カップルだらけだなー」

「ココはそーいうとこだからね。まー、俺らもそうだろ」
東流のボヤキに返すと視線を落として、目元を細め小さく頷く。
普段羞恥心のかけらもないのに、こーいうところで照れる姿が可愛くて仕方がない。
マシンに乗る順番になると、東流はさっさと乗り込んでベルトを嵌める。

「上から下まで何度かストンって落ちるやつ」
「バンジージャンプみたいなもんだな」
ちょっと違うけど、 だいたいそんなもんだとかいいながら、見えないように、東流の手を掴んで後ろ手に握る。

「マシンより、コッチのがドキドキしねえ?」
顔を覗き込むと、浅黒い肌を染めて小さく頷いた。

可愛いとこばかりで、ホントにたまんなくなる。
上昇していくマシンに乗りながら、俺は東流の耳元で、愛してるよと、呟いた。
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