オレ達の日常※sideY

102

「なんだよ……、……ソレ」

東流に話せばそうなると思ったが、かなり不機嫌きわまりない状態になっている。
ついつい東流に言い出せないまま、一週間経ってしまったのだ。
その前からも、何かいいたそうな東流の表情に迷ってはいたのだが、話せなかった。
イライラしているのが顔に出ているので、はっきり分かる。

それもそうだろう、輪姦されたあの日のことはハッキリ思い出したが、それ以前の記憶はまだまったくもって戻ってきていない。

思い出されたくないといっていたことを思い出して、思い出してほしいと東流が思っていることは、まったく思い出せてないのだ。

「悪ィ……」

東流とどうしてこういう関係になれたのかも、まだ謎のままだった。
誠士に聞いたが、何故だか教えてくれなかった。
俺は推薦入試だったので、試験も終わったし他は受けなかったので、のんびりと部屋にいるが、東流は毎日教習所通いだ。
私立の願書は出してなかったので、落ちたらそれまでなのだが自己採点の結果では問題はなさそうだった。

余裕で受かるところで、推薦入試を選んだのだろう。堅実な俺のやりそうなことだ。

「いつから俺ら付き合ってるんだ?」

誰も教えてくれないので、直接東流に聞いてみると口元に拳をあてて俺を眺めて目を向けると、ぼそりと話した。

「夏休み…………」

なんとなく不機嫌は続いているのか、俺の前ではあまり吸わないタバコをとりだして、東流は火をつける。
態度は分かりやすいといえば分かりやすいのだが。
ずっといらついたような不機嫌な顔をされて一緒にいるのもなんだか疲れるな。

「ホント全然思い出せねえのかなァ」

東流は焦れたようにタバコを消すと、ソファーから腰をあげて俺の腕を引く。
腕に絡む手が少しだけ汗ばんでるように感じる。

「きっかけみてえなことがあれば、たぶん思い出せると思うんだけど……」

立ち上がれというように顎先をあげるので、ソファーから降りて引かれるままにトールの後ろを歩く。

「一番思い出したくないことを思い出したんだから、他のことも思い出せるンじゃねえのか?」

そりゃ、付き合ってた期間のことを忘れたら、やっぱ恋人としてはつらいだろうな。
俺は、1年間のことを忘れててもずっと東流がスキだったわけだから、こんな風に一緒に暮らしているのも奇跡みたいなもんなんだけどな。
そんなキモチは東流にはわかってはもらえないだろうな。

なんだかまだ現実じゃないみたいだ。

浦島太郎っていうやつかもしれない。
自分の知らないところで時間が流れていたっていう。

「あと2週間あれば、教習終わるからさ、あとは誕生日に免許センターいけばいいし。オマエはまだ独りででかけんなよ。東高は、報復とかしてくる風習があるからさ」

聞けば俺が拉致された後に、東流は拉致した東高のやつらを30人病院送りにしたらしい。
30人全員に輪姦わされたってわけじゃないんだろうけど、相変わらず数と力でどうこうしようっていうやつらだ。

「わかってるって……30人潰したってなにしたンだ」
「グロッキーでHP足りてなかったからさ、バイクで轢いた」
さらっと言うが、目が覚めたときには東流も頭に結構な怪我してたなと思い出す。

「一歩間違ったら捕まってるぞ。ソレ」
「これでも精一杯加減はしたつもりだけどなァ、HP満タンだったら殺人犯になってたかもしれねえけど」

肩をそびやかす相手の言うことは、きっと本音だとは思うけど不思議に怖いとは思わない。
ぎいと寝室の扉を開いて、中へ引き込まれると少し寒い部屋の空気に身震いをする。

「で、なんで、寝室きてんの?まだ夕方だぞ」

「あれから一週間シてねえ……」

少しかがんで耳元で切なそうな吐息とともに囁かれて、俺は少し目を見開いた。
確かにあの日、東流に抱かれてから特になにもしてない。
昔から東流はそんなに性欲があるほうではないと思っていた。
俺がちょっと下心だして、オナニーみたいなって思ってAVを見せてやっても、ちっともオナニーしようとすらしなかったし。

俺は意外そうな表情をして、少し眉を寄せて肌を恥ずかしさに染めている東流の顔を覗き込む。

「トール、してえの?」

東流は低い声で、僅かに拳を震わせている。自分から、誘うのがよっぽど慣れてない感じである。

「………オマエはすっかり忘れちまってるンだろうけど……」
少し潤んだ目は、俺が欲しいのだと訴えている。
押し付けられた腰に、堅いものがあたってビクビクと震えている。

俺の中の加虐的な部分が、ぐっと煽られる。

「……そういうふうに……オマエは俺を調教したんだ……」
「そっか、俺の知らない間にトールは随分淫乱になっちゃったんだね」

耳元で息を吹き入れながら少し意地悪く囁くと、首筋がカッと紅潮するのがわかる。
ベルトのバックルをかちりと外して、ズボンの上から膨らみをなぞるとたまらなそうに眉をさげて、鼻から熱をもった呼気を漏らす。
切なそうな表情で見返されて、不機嫌でイラついていた原因が欲求不満だったのかと合点がいく。
まったく気がつかなかったが、東流はすっかり俺に言い出せずに誘うことも出来ずヤキモキしてたのだろう。
記憶が戻ったから、期待してたのかもしれない。だけど、俺が全部思い出したわけじゃないと打ち明けたから。

……らしくないな。

自分の欲求をごまかすことなんかするタイプじゃないのにな。
「なあ、トール、服脱ぎながらどこをどうされたいのか、俺に教えてよ。忘れちゃってるからさ」
ベルトを引き抜くと、東流はためらいがちにズボンと下着を引きおろして、長い脚を空気に晒す。
ペニスは腹につくくらい反り返っていて、先端からは既に我慢汁が溢れている。
みるからに全身で俺に発情しているのだ。
そういう体に俺がしたっていうのか。
普通のやつより、どっちかっていうと性欲は薄い方で、そういう衝動とは無縁だったような東流が、発情していて俺がほしいと全身でいっているのだ。
興奮しないわけがない。
東流はシャツも邪魔そうに脱ぐと、俺の腰に腕を巻きつけて目を伏せて耳に唇をよせる。

「ヤス……、俺のケツにちんこ突っ込んで……」

低い声が微かに熱を帯びて聞こえる。
まったく色気がない言葉なのに、俺はなんだかすごく興奮してきた。
もちあがっている東流のペニスを掌で包むように握って、先端を親指で擦りあげる。
「トールは、俺にちんこ突っ込まれたい体になっちゃってるの?そこのベッドに座って、俺によくみせて」
力が抜けていく体を軽く押してベッドに倒すと、M字に開脚させて東流の右手をとって、玉袋をもちあげさせてアナルをよく見えるようにさせる。
少し開いて充血したアナルはひくひくと既に期待をして開閉している。
ペニスから流れるカウパーでそこはびしょびしょに濡れて、興奮しているのか東流の唇もひらきっぱになって呼吸を荒くしている。

「な、びちょびちょに濡れて、オンナのおまんこみたくなってるぜ」

「……ッ……っふ…ン、ァハァ…ハァ…っっ」

笑いながら囁くとかっと体をこわばらせて、きゅっと奥歯を噛んで視線を逸らす。
反対の腕をとって、東流の長い指をアナルにあてさせて、ゆっくりと円を描くように撫でさせる。
「トール、指入れて、俺のおちんちんだと思ってオナニーしてよ」
腕を離して、唆すように耳元で指示すると、東流はカウパーをからめて躊躇いがちに二本の指を挿し込みくちゅくちゅとゆっくりピストン運動を始める。
乳首についたピアスをかるく引っ張って捏ね回すと、顎をあげて快感にむせび泣きはじめる。
「ぁっ、ああ…っ……ッ、てく…っンンン、うう」

内股は痙攣して感じ始めているのか、濡れて開いた唇から顎先に唾液を零しはじめている。
「ああ、ふう……やす…やす…………」
淫らに蕩けた表情で、俺の名前を呼びながらぐちゅぐちゅとアナルを拡げて咽ぶ東流の様子は、なんどとなく想像はした。
これは、本当に現実なんだろうか。

ベッドヘッドの棚をあけると、SM道具のような玩具がごちゃっと入っている。
これ全部使ってたのかな……。

東流は俺の様子も気にならないくらい、自慰に夢中になっている。
「ああ…く…っつうう……やす…やす…イクっ、イク…ッ」

指を突っ込んだまま、体をそらして腹部に白い液体を撒き散らしながら東流は痙攣して、快感に蕩けきった表情で求めるように俺を見上げた。


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