オレ達の日常=SIDE Y=

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見渡す限りカップルの群れ。
真昼間だっていうのにキラキラした装飾が施されている。
路上でチキンやらケーキやら、呼び込みやらでいつもより騒々しい。
「プレゼントとかって、何やったらいいもんなんかなァ」
とりあえず、駅前の専門店街に入ったが、まったく見当がつかない。
ナズと付き合ってた頃は、ヤスを呼び出して選ぶのを手伝ってもらってたし。
今考えると、随分残酷な仕打ちをヤスにはしてたかもしれない。
ずっと好きでいてくれたって言ってたし、でも、あいつもオンナとっかえひっかえしてたんだから、分かるはずもねえし。
「好みっぽいモンかなって思うけど、康史、オシャレさんだしなー。」
「セージのセンスでも厳しいか」
「まあ、トールに貰えりゃなんでも喜ぶと思うけどな。前に、トールがヤツにやった射的の景品のウサギのぬいぐるみ、まだ部屋に飾ってあるだろ」
「え……そうだっけ?」
「トールがこんなもんイラネって、渡したの。大事に置いてあるぜ」
「……セージは気づいてたのか」
「まー、好きじゃなきゃ、弁当毎日手作りとかしねえとは思ってたけど……。でも康史は、ほら、オンナったらしだからさ、トールには思いを伝えたりしねえだろうなって思ってた」
男物のファッション雑貨が置いてある店に入ると、とりあえず中を見回す。
すぐに目に入るのは、龍やら虎などの柄の入ったカバンやマフラーに引かれて、つい目で追ってしまう。
「……俺が鈍感なンかなァ」
「まあ、二人して鈍感ちゃあ鈍感だけどな。」
店内を見回して、セージはちょっと考え込むようにうなりながら、店内の品物を手にとる。
「そーなのか?」
「ン。俺から見たら、オマエら昔から相思相愛だしよ」
昔からそう見えていたのか。
「ヤスも強姦なんかしねえでも、スキだって言えば、トールもOKだしただろうに」
「あー。…多分…そうだなァ」
「大体、アイツは俺に相談くらいしてくれりゃいいのに。俺に相談があれば、ビシッと好きだと告白すれば大丈夫って助言できたのによ」
ぶつぶつとグチっぽく言いながら、セージはシンプルな白と緑のツートーンのマフラーを手にして、俺の腕に乗せた。
まァ。きっとそのとおりだろう。
多分、好きだといってくれたら、俺は拒否はしなかったと思う。
セージの言葉に頷きつつ、マフラーや手袋などが並べられるのをじっと見る。
なんとなく地味っぽい。
「無地とかシマシマとか、そういうのがアイツっぽくねえかな」
「でも、そっちのライオンとか虎とかのもカッケエぞ」
「獣系は、トールに似合うけど、康史にはあんましゴテゴテしてねえのがいいよ」
「このシマウマとか虎柄もシマシマだぜ」
「トール。動物禁止だ」
俺が手にしていた虎柄のマフラーを元に戻して、セージは横に手を振った。
セージの意見を参考にしながら、少し考えて俺はウォレットチェーンに手を伸ばす。
チェーン自体はしっかりしていて、さきっぽに綺麗な赤い革の飾りがついていてシンプルである。
重さも丁度いいくらいで、外せば武器にもなりそうだ。
「……カッコイイから、コレにしようかなァ」
「まあ、服のセンスとかは、本当に難しいけど、コレなら問題なさそうだしな」
「……こういう風に、ヤスにプレゼントとか選ぶの初めてだけどよ……なんか嬉しいなァ」
セージを振り返って言うと、セージは一瞬頷いて笑顔を作りかけたが、
「リア充、爆発シロ。とりあえず、会計したら、ラッピングしてくださいって言うんだぞ」
セージに教わると、俺は喜び勇んで会計へと向かった。
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