オレ達の日常=SIDE Y=

27

誠士の背中を見送り、ベッドに横になっているトールを見下ろすと、熱っぽいようなどこかうかされたような表情にぶつかる。
多分、誠士の言っていることは正論。
どこまでいったら、トールの限界にたどり着けるか、俺が一番なんだって無闇に手を伸ばしていた。
トールが俺をなくすことを怖がってることは、昨日直接言われたのに。
他人から聞くのはまたちょっと違う感じなんだな。

俺は手を伸ばしてトールの腕にかかった手錠を外す。
「ゴメンな、辛い思いさせた」
自分も寝そべって、トールの逞しい体を抱き寄せる。
それだけで膚を震わせて、俺の体を抱き返し何かを堪えるように強く力を篭める様子がいじらしくてたまらない。
虐めたくなる気持ちを抑えて、そっと背中を撫でて頭の上に何度も唇を充てた。
「謝ンな。俺だってわかんねえんだ、オマエだけのせいじゃない」
俺の顔を見上げて、ちょっと欲情に潤んだ目を向けられるとたまらず喉が鳴る。
今日は無理をさせず、トールの求めにだけ応じようと心に決めた。
「わからないって?」
「どうやって、セックスに応える以外で愛情表現すりゃあいい?」
付き合ってからずっと一緒にいればセックスばかりを繰り返していた。
たまに出かければ、まあ、なじみの喧嘩に巻き込まれたし、ちゃんとしたデートのようなこともあまりしてない。
一緒にいるとたまらなく暴走する。

「……それは本当に俺のせいだよ。ラブラブな恋人になりてえとか自分で言っといて、調子ノリ過ぎて俺の性癖押し付けたセックスばっかになってた」
「俺は……オマエといれりゃあイイんだけどな…」
反省した俺の言葉に、うーんとトールは唸って、熱い体を押し付けてくる。
一緒にいれりゃあいいというトールとは、一ヶ月間ほとんど一緒にいなかった。
一緒にいると暴走してしまい、受験勉強できねえと思い、ちょっと遠ざけていた。
その分教室でスキンシップをとって補ってはいたのだが、補ったのは俺だけで、トールはどう思っていたのだろう。
だったら……いつも一緒にいればいいんじゃないか。
「一ヶ月もほっといてゴメンな……、トール……一緒に住まないか?ここに」
「……勉強の邪魔じゃねえか?」
「別に平気だよ。どーせ、トールは部屋にいてもゲームしてるか、漫画読んでるかだろ」
決め付けて言うと、トールは首を振って反論する。
「腹筋鍛えるときもあるし、サンドバック叩くこともあるぞ」
まあ、その肉体を維持するにはそれくらいはしてそうだけどな。
「それくれえ気にならねえよ、今日から同棲しよう」
「お…おう。俺は嬉しいけど」
ちょっと戸惑ったような、でも嬉しそうな表情でトールは頷いてぎゅっと抱きついてくる。
股間のほうはビンビンに勃って俺の腰に押し付けられる。
「決まりだ。トール、体、大丈夫?」
熱をもってたまらなそうに震えるいちもつに、俺は心配になってトールの体を抱き寄せる。
狂ったように求めてくるような体が愛しかった。
「朝から、スゲエ、エッチしたくてたまんなかった」
「それは、それでそそる言葉だけどね」
精神的に不安になって、色情症になるっていうのはよく聞く話だし、調教法のひとつとして聞いたことがある。
でも、やっぱりそういうのは、トールらしくねえとも思うから、不安を解消する方向に動こうと思う。
「俺、壊れねえよ」
「不安になると、そんな風になるってのは聞いたことがある」
「そうなのか」
いまいちピンときてはいないらしい。
こころのどっかで不安になってたとしても、どこか鈍感なトールは自分のことにも気づいていないのだろう。
「そうさせてたのは、俺だとも思うから」
「ンなこたねえよ」
「だから、ちゃんと言っておくよ。俺はトールに小学生の頃からずっと惚れてっからさ。やっと手に入れたのに手放したりしねえからな。誓うよ」
抱き寄せたからだがぶるぶると震える。
トールは俺の体をその腕にぐっと抱き込むようにして引き寄せる。
そして、耳元に熱い唇を寄せて、低くかすれた欲情した声で囁きかけてくる。

「…………ヤス……我慢できねえ。抱いてくれ」
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