オレ達の日常=SIDE S=

24

相変わらずの自分らペースの電話に若干切れつつも、コンビニの袋を抱えて合鍵を差し込んで部屋にはいる。
ベッドにはぐったりとした様子の東流が死んだように寝ていて、慌てて予備校にいったのか部屋は片付いていない。
部活もないし、推薦決まったので受験もなくなり暇だからいいんだけどな。
机の上に律儀に置いてある映画のチケットは海外のラブロマンスものである。
トールとじゃあいかねえもんな、こんな映画は。
俺は財布に収めて、当分起きる様子もない東流をほっといて、ゲームを始める。

暫くたってもぞもぞとする動く物体の気配に目をやると、ぼんやりとした東流の表情にぶちあたる。
どこか気だるい表情だが、なんとなくエロイ顔をしている。
「あー、東流、起きた?」
ゲームをとめて近づいて、おにぎりを目の前に差し出す。
大食漢だから、山ほど買ってきたものの具合悪そうだな。
「……セージ。来てたのか、ヤスはヨビコー?」
「おう。メシもってきたよ」
だいたい俺を呼ぶときは、基本使いっぱである。
「おう。ありがと。つか…ヤバイ……」
東流はいつになく、不安そうな表情で俺を見上げる。
ちょ、どうした。
やべえって何だ?

「大丈夫か?」
「うーん、朝勃ちがすげえことになってる、見てみ?」
布団をはいで見せようとしてくる東流の肩を押し付けて、ふるふると首を横に振る。
「ハァ?つか、見せなくていいから。なんで俺に見せようとするんだ」
ダチの朝ダチ見てもしょうがねえだろ。
マジこいつの配線だけは本当に理解できない。
「いやなんとなく、すげえなあって思って……発情期か、俺」
ぼやあっと呟いている表情も、浅黒い膚も色づいていて発情期って言葉はお似合いだった。
うーんといいながら、毛布の隙間から見える腹筋の痣に俺は息を呑んだ。
「つか、何その痣。紫じゃん。ヤス?」
DVしてるのか?SMじゃあきたらずに。
多少の暴力じゃ東流はなんでもねえんだろうけど、それはまずいでしょ。
うろたえた表情を浮かべる俺に、東流は首を振った。
「いや、ヤクザさんに絡まれた」
「ちょっと、何その怖いワード」
DVより恐ろしいワードを耳にして俺は背筋を凍らせた。
「大丈夫、腕折ってやったから」
「ちょっとちょっと、東流ー。それ更にヤバイよ」
そんなのしたら、組の威信をかけて報復とかされちまうだろ。
「そうだよねー。俺もヤバイかなって、ちょっと思ってる」
あんまり思ってないような口調なので、やっぱりズレてるかなとも思う。
「なあ……発情期おさまんねえ」
眉を寄せて掌をさまよわす様子に俺は思わずその腕を握って動きをとめる。
「トイレ行って抜いて来い。俺に見せるな」
ここでオナられたら困る。
とめないと始めちまうだろ。こいつはそういうとこが、本当にアレすぎる。
「腰が痛い…」
「早くいってこい」
ぶうたれながらベッドから降りて前かがみになってトイレに向かう後姿を見送った。
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