オレ達の日常
10
コニシのせいでクラス中に俺らの関係はバレてしまったのだが、特に悪いことも起こらなかった。
前よりクラスの連中は俺に声をかけるようになってきたし、ヤスはヤスでクラスの連中の目も気にせず、俺にセクハラを堂々とするようになった。
まあセクハラをするのは構わないのだが、その後ヤスは予備校にいくようになったし、一人で悶々とする日々を送るはめになる。
結局、つらい目に合うのは俺なのである。
なんだか損な役回りだ。
「なあ、本当に二人ってセックスとかしてるのか」
机に半分突っ伏してうとうととしていると、俺の頭上でヤスと東山が話しているのが聞こえる。
昼休みからそんな話よくできるなあと、半分目を開けてちょっと髪の隙間から眺めるようにみあげる。
「してるよ、なあ、トール」
さらっとヤスは答えて俺に振ってくる。
つか、何で俺に振るんだと睨み上げると、へらっとした表情にぶつかり、俺のみみたぶを指先で揉むように刺激してくる。
「なあって……オマエなあ……一ヶ月以上ヤッてねえよ」
ぼやきまじりにため息を吐き出す。というか、ため息が最近減らない。カラダはもっと欲しいのに、セクハラしかされない。
こんな感じでセクハラ三昧であるのに、セックスはご無沙汰である。
ヤスはヤスでずっと抑えていた衝動を抑えなくていいという開放感に浮かれているようだ。
俺も気づかないくらいに、ずっと抑えていた感情なのだから当然だろう。
「長谷川が突っ込まれるの想像つかない」
東山がじいっと俺を見てくるので、思わず睨み返してしまう。
「ンなもん、想像しなくていいからよ……」
辟易しつつ、机につっぷしたまま顔だけをあげる。
そら、俺だって長年同級生に恐れられていた男である。
プライドとかどうでもいいが、想像されるのは少し遠慮したい。
「見てみる?」
軽い調子でヤスが言うのに、俺は眉をぐっとよせ不機嫌にヤスの腕を引っ張る。
「ヤス…ぶっ殺すぞ」
「照れちゃって」
照れるとかそういう問題ではない。
なんていうか、ヤスの弾けぶりを止めてやってほしい。
俺が止めるべきなんだろうが……。そういうのは外でやったらイイコトねえってのは色々失敗して知っているはずなのに。
なんだかんだヤスも懲りることは知らないんだろう。
「ホテル代おごってくれたら見せてあげてもいいぜ」
「……アホだろ……俺は嫌だぞ」
勝手に決めようとするヤスに俺は拒絶の姿勢を見せる。
つか、何が悲しくてクラスメイトに公開せねばいかんのだ。つか、公開とかマジで笑えない。
「トールだってしたくてたまんねえって顔してるくせに、見せたぐらいじゃ減らないし」
そういう問題じゃねえんだけどな。
本気で嫌な表情をしているのに、分かってるんかね。
「減るって」
「家に戻る時間はないけど、休憩時間くらいならとれるから。バイトもしてないからホテル代もないし」
まあ、俺もしたいってのは同じだが、そこに第三者がいるのは嫌だと思う。
そういうの分からないもんなのだろうか?
いたって普通の感覚だと思うが。オトコ同士は違うのだろうか。
まあ……そりゃあんなことがあって、今さらっちゃあ今さらだけどな。
「おごるよ、見せてくれるの」
東山の言葉に、ヤスは何故か驚いた表情を浮かべた。
ヤスが東山を煽ったくせにである。東山がいらねーというとタカをくくってたに違いない。
「なあ……東山、なんでそんなノリノリなの?」
「興味本位だよ。男同士とかなかなかみれないじゃない」
悪びれない言葉に嘘はなさそうである。
「……なあ、俺は嫌だ」
起き上がって東山の顔を見やり、不機嫌に顔をゆがめた。
「じゃあ、外でヤる?」
ヤスはじっと見つめ、俺の顔をじっと見つめる。
ヤりたくて仕方がないのは、ヤスも俺も一緒なのだろう。
「……わかった」
俺は、腹を括った。
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