オレ達の日常
8
「大丈夫?」
目を開くともう見慣れた天井と、心配そうなヤスの表情に出会う。
やっぱり俺は、こいつのこういう俺を心配する顔が好きだ。
俺を心配して、不安で仕方がねえって顔。
たまらなく愛しくなって胸が熱くなる。
「……ああ……、ヤり過ぎ……体いてえ……」
体を動かそうとするとぎしぎしと筋肉が痛んで音をたてる。
下半身もかったるくて力が入らない。
相当体力に自信がある俺が意識失うまでヤり続けるって、どういう了見だとも思う。
「もっともっとってねだった癖に…」
頬を膨らませて、唇をとがらせてヤスが言い返す言葉に、カッっと体が熱くなる。
確かに、もっとってねだったのもうっすらと覚えてる。
本当に俺はどうにかなっちまってる。
いくら、ヤりたくて仕方がない年頃っつっても限度あるだろう。
本当に、ヤスなしではいられない体になっちまってる。
「………とまんねェんだ……狂っちまってるのかなァ。俺のカラダ……」
不安で堪らなくなる。
俺一人で生きていけって言われたら、体をもてあましちまうのが思い浮かぶくらいトチ狂っている。
「エロくって素敵だけど。凄く好きだよ」
ヤスの迷いのない言葉に、俺は救われる。
体に痕を残された時も、もう二度とヤスに体を見せないと誓ったのに、全部受け入れてくれた。
乳首にされちまったピアスも何もかも全部受け入れてくれている。
こんな風に、強欲になっちまった体でさえも。それすら好きだと受け入れてくれている。
俺なら……多分無理だ。
俺は心がそんなに広くない。絶対にその原因を考えたら、許せなくなってしまう。
「……オマエがそういうなら、イイケド……、っつか、足とか妙にいてえ」
「あー、ベッドに載せるとき引き上げられなくて引っ掛けてぶっつけちゃった」
へへっと笑ってゴメンゴメンと足を撫でてくれる。
それだけでもじわじわっと反応しそうになるのを堪えて俯く。
「……まあ、俺も重いし……よ」
「すっごく今日はやらしくて可愛かった。へへ、写メ撮っちゃった」
へらっと笑って向けてきたスマホの画面には、下半身精液まみれで気を失っている俺が写っている。
「ちょ、待て。変態、何してくれてンだ、消せ、マジすぐ消しやがれ」
恥ずかしさに腕を伸ばして、ヤスからスマホを奪おうとするが体にまったく力が入らず奪えない。
「パスかけてあるから、大丈夫。おかず、おかず」
「…バカやろ……ンなもんおかずにしねえでも本物がいるじゃねェか」
諦めて、でも他のAVをおかずにされるよりいいかなと考えてしまうあたり、相当俺も終わっていると思う。
整った綺麗な顔で、どこからどうみてもイケメンなヤスが、モテモテにもかかわらず俺のことしか考えてねえってのも、すごく幸せなことだと思う。
意外にメンクイだとも言われたけど、ヤスの顔が単純に好きなんだろう。
ナズナは本当にヤスに似ていた。
よく聞いたら親戚らしいんだけど、それで似ているんだなと納得する。
「でも受験勉強もそろそろしないとね。時間無い日もあるだろうし。トールは就職先決まってるんだろ」
「ああ……。親父のダチのトラック屋に……」
そうだよな、こうやってセックスばっかしてるわけにはいかねえよな。
「会えないときは、トールも俺を思い出してオナニーしろよ」
「オマエなあ……」
抱きしめられて肌を撫でられると堪らなくなり、俺は抱き返すように相手の体にしがみついた。こんなに触れ合ってたら……。
「俺の雌はトールだけだからな」
耳元でささやかれる言葉と吐息に力が抜けそうになる。
もう一回ヤりたくなっちまう……強欲すぎる。
「ンなこっぱずかしいことシラフで言うな」
これ以上抱きついてたら、理性がもたねえ…。
体を離そうと腕をほどくと、逆にぐいっと引き寄せられて密着度が高まる。
「あー、もっかい抱きたくなっちゃった。もうムリだって、あんあん泣かせたい」
同じようなことを考えていたのかと目を瞠るが、耳たぶをしゃぶるように唇に含んで囁かれ、力が抜けそうになる。
「バーカ。今日はもう無理、弾ぎれ、弾ぎれ」
「トールの弾は関係ねえでしょ。まだ…やわらかいよ」
ぬるっと指先がまだ閉じきれないアナルへと挿し込まれ、くちゅっくちゅっと音をたてて浅い箇所をなぶられる。
「や……めっ…っつうう」
拒もうと腕をつっぱるが、下半身は欲望に正直に脚を誘うように拡げてしまう。
「大丈夫、トールはすぐ気持ちよくなって欲しくなっちゃうからね」
「……や…めろって…っつああ、ハァ…あああっうう…やす…うう」
翻弄するような指の動きに、俺は拒否することもできず、ただただ咽び泣くしかなかった。
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