トールとヤス
オレ達の喪失
つけっ放しのTVからは、雑音のようにAV女優の派手な喘ぎ声が響く。
その声に合わせるかのように、俺の唇から漏れるのは熱い濡れた呼吸と喘ぎ。
内臓を圧迫するような肉塊の動きに揺さぶられて、情けなく助けを請う俺を、俺はどこか客観的に見ている。
「――ッァ、、、ッく・・・・・・ヤメ・・・てくれ、ッヤス・・・ッ、・・・のつもり・・・ッ」
客観的じゃない。あまりの衝撃に俺は頭が麻痺していたのだ。
殴りつけ気絶させた俺を全裸で腕をビニールロープで拘束して、無言で欲望を抜き差しするオスに俺は必死で助けを請う。
それは幼いころからガキ大将だった自分に、常についてきた唯一無二の親友。
何かするときには、いつも隣にいた。
家も近い俺と康史が仲良くなるのは自然な事だった。
何故こんなことになってしまったのだろう。
新しい裏モノのDVDを仕入れたという康史とのいつもと変わらないやりとりで、俺はひとり暮らしをしている康史の部屋にやってきた。
どう考えても、俺の体はTVの中の女優とは似ても似つかない。
タッパは183cmはあるし、喧嘩で鍛えた体は女の代わりになるような代物ではない。
ぐっと脚を大きく開かれ肩へと担がれれば、捻じ込まれたペニスの形をまざまざと思い知らされる。
「・・・・・・ッ・・・嫌・・・だ…ッ…、ァ……ァ、ヤス」
首を左右に振っても逃れられず、俺の体はすっかり与えられる快楽に蕩けペニスも勃起していた。
女性相手には無い与えられる感覚に夢中になっている自分に嫌悪しながらも、腰を突き出して揺らすしかなかった。
じゅぽじゅぽっと水音が粘っこく響き、繋がっている部分が拡がって康史のペニスを銜え込んでいる。
体の箍は外れてしまったように、淫らに康史のペニスの動きに合わせくねり、既に意志の力も及ばず心だけおいていかれてしまった感覚に必死な表情で康史に縋る。
親友の表情は、いつもの温和そうな顔ではなくすっかりとオスの表情になっている。
こんな…奴は知らない…。
「…トール…、すげえやらしいぜ。通販の媚薬入りローションが効いてるみたいだな」
体内を駆け巡る熱の正体が分かり、俺は情けなくも恐怖に涙を流しながら疼く腰を康史の腰へと押し付けた。
……ずっと……親友だと思っていた。これまでも、これからも。
奥まで押し込まれる度、貫かれる度、こころのどこかが離れていく喪失感にしゃくりあげる。
「――ァ……ァ…ッぁ…ウッ…や…ッヤス」
ぐぐっと胎内の奥を突き上げられ、一点の肉腺を擦られればビクンと痺れるような感覚が背筋から這い上がりビクンビクンとペニスを震わせて粘液を吐き出す。
狭まる胎内で、康史のペニスが大きく膨張してぬるい液体が胎内に注がれる感触に身震いを繰り返す。
終わると思えば、うつ伏せにされて再び貫かれた。
「――ァ……ッヤ、、、ス……も……ッや…ァ」
必死で訴えても耳を貸さず、失神するまで犯され続けた。
快感で頭が…壊れる。
…堕ちていく自分の姿が、俺の脳裏に浮かんでは消えていく。
喪失感だけを残して。
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