竜攘虎搏
4 ※SIDE T
東高の学内で2年のオレらには、オレの派閥以外に3つの派閥がある。オレが4月までいた真壁派、それと小倉派の下についていた金崎派、それと数は少ない穏健派の内添派である。
3年もを従えている真壁派には数では負けるが、1年を積極的にいれたオレ達の派閥は、数でもナンバー2だと言われている。
学校が騒々しいなと思えば、この辺で一番の猛者と言われているハセガワに、金崎の一派がコテンパンに潰されたらしい。
金崎のとこの奴らで残った奴らが、徒党を組んで報復だのなんだのと騒いでいるようだ。
…………報復ねえ。
今回の発端は、小倉さんがハセガワを倒したヤツをトップにすると触れまわったからだ。
だからといって、オレは自分の力量くらいは分かっている。
小倉さんすら1度も勝ったことがない相手を、倒せるなどとかは考えていない。金崎も正攻法じゃ無理だとふんだのか、相棒を捕まえて脅迫しようとしたらしいが、逆に脅迫のいとまもなく奪還されて、全員病院送りにされたらしい。
噂じゃ、ハセガワの相棒に手を出したら10倍返しにあうとは聞いていたが、本当だったようだ。
とりあえず、このあとどうすっかだ。
このまま、うちの高校が尻尾巻いて引き下がっているってのも気に食わない。
「内添、金崎ンとこの報復、どうすんだ?」
とりあえず、オレは比較的、自分と相性の良い内添のところに、鉄パイプ片手に乗り込む。
穏健派だしこいつもテッペンには興味なさそうだが、うちの高校の沽券にかかわる問題だ。
内添は、眼鏡の奥の細い目でオレを見返し、
「そもそも、金崎が卑怯な真似しただけだし。ケガするだけだろ?…………真壁さんは何ていってんだ。」
何故、そこで真壁の名前がでてくる。
オマエの派閥だろうが。
「まだ、聞いてねーよ」
「ま、真壁さんはハセガワには手を出さないから今回もそうだろ。富田のとこが武闘派で数揃えてても、敵わないだろうし。まあ、真壁さんがヤるってなら、手を貸してもいい」
ガンとして内添は、自分だけの意思では動こうとはしない。
テッペンはいらないとかいいながら、真壁は、実質頂点ではある。他の奴らは、真壁なしにはまったく動かないのだ。
真壁派を出てから、この8ヶ月でその現状を思い知らされた。真壁には何度もタイマンをかけあうが、のんびりいつ話を逸らされてばかりで、余裕でオレをあしらうのが、腹が立って仕方がない。
「分かった。真壁に聞いてくる」
オレは内添の教室を出てそのまま真壁の教室へと向った。
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