オレ達の日常

128

昔は喧嘩をして身体を動かせば、性的欲求なんかはすぐに吹き飛んだと言うのに、いまは逆だ。大暴れしたのに欲求が消えない。いや、むしろ、興奮につられてしまっている。

期待とか以前に、俺はずっとその興奮に煽られてるのだ。

「ちょっとづつは色々思い出してるのに、ここに来た記憶はちょっともないんだ」

噛み付いた歯の隙間から漏れる辛そうな康史の声。
きっと、康史も、思い出して辛い思い出に向き合った。
俺だけ逃げるのは、カッコわりいな。

「教えて?トール、なんでそんなに、手が震えているの?」
優しく響く声に、ぐっと胸が詰まる。暴かれたくない過去。忘れてしまっているのなら、全て覆い隠したい。
エレベーターが止まって、俺は康史の腕を無言でひいて部屋の前に立つ。

俺には怖いものなんか、ないとずっと信じていた。

だけど、あの時、俺は怖いものを感じてしまった。隠すことは自分の臆病を認めることになる。
康史は俺の顔を見上げて、キーカードをを挿し込む。

「最初に来た時は、俺、敵にクスリ嗅がされてフラフラだった。敵は撒いたんだけどさ」
ヤスの腕を引いて診察台のようなベッドへと向かい、俺はヤスの腕を離して、ストリップよろしくばさばさと服を外して全裸になる。
「こーいう部屋だし、まあ、ヤスなら拘束するだろ?」
台に腕を置いてヤスの目の前に尻を差し出し、ケロイドになっいる尻頬をそっと自分の手で撫で、
「気を失うまでヤリまくって、そこに、敵がやってきてヤスを殴った後、俺は……」

「トール!わかった。いい、いうな」
指先が震えている。らしくねぇ。とっくに、わすれたはずだった。
「ここにも、ヒデェ落書きされたンだけど、ヤスが焼いて消してくれた。ここは、ヤスのだって印に変えてくれた」

「も、う、いいって、トール」

「悪い思い出だけど、俺は、これは嬉しかったんだ」

ケロイドを何度も指でたどると、その動きを止めるように康史の手が重なる。

「トール。オマエは、全部、俺のだ」

背後から身体を抱きしめられて、うなじに歯をたてられる。獣の掟のように俺は力を抜いて目を閉じる。

すでに臨戦態勢に入っているペニスの先端をくちくちと擦って粘液を溢れさせる。

「お、れは、ヤスの、だ。ぜんぶ、オマエのもんだ」

康史の言葉に答えながら、俺だけが理性をはがされていく。なんもかんも、はがされて、むき出しの獣になる。

思い出してほしくない、だけど、気持ちは思い出してほしい。

せめぎあうのは、初めて怖さを覚えた瞬間のことだから。
康史は俺に目の前にある診察台に乗れと視線で示唆して、俺は全裸のまま素直に診察台に腰を降ろす。
康史は俺をじっと眺め、多分不安な気持ちを悟られたのか、
「大丈夫、俺が色々思い出しても、トールを離すなんてことは無いから」
少しだけ震えている俺の指先に気がついたのか、康史は手にとって唇をくっつけてから、両足を開脚台へと固定する。

俺が恐れていることを康史は記憶もないのに察知したようだ。
何より恐れているのは、色々思い出した康史にどう思われるかだ。

それだけだが、それがすべてだ?

ゆっくりぐるりと部屋をみ回すと前に来た部屋より、色んな設備があるようだ。

あの時は天井から吊られただけだったかなんか他にされたのか、記憶が曖昧になっているから、俺も康史と変わらない。

「前は、これ使った?」

問いかけに、俺は診察台を叩いて首を横に振った。
「トールがさ、まだしたことないことしたいんだけどな。今まで何したかわかんないからさ」
目を細めながら、思いつきねように、俺の下腹部に指をゆっくり這わせて陰毛をフサフサといじる。
もう期待で擡げているちんこに刺したピアスを撫でて、俺の顔をじっと見つめる。
「やったことないこと、って言われても、ヤスが何したいのかわかんねぇし」
「ココは剃ったことある?」
下の毛を指で絡めて、綺麗な顔を緩めると首を傾げて俺を見上げる。
「ねーよ」
「ガキみたいにツルツルにしてもイイか?」
有無を言わせない口調で、もうヤル気満々で既にローションを俺の股間に塗りたくり始める。

「変態くせェな」

「そだね。剃った毛を袋に入れて財布にいれようかな。ご利益ありそう」
ふっと笑いながら、アメニティからカミソリを取り出して、わざとらしくちんこの根元に刃先を当てる。
「ご利益、とか、ねーわ」
冷たさと、ゴクリと喉を鳴らすヤスの表情に背筋がぞくぞくとして、くぷっと先っぽから粘液が溢れる。
「大丈夫、ちんこ切らないから。切られそうで興奮したの?」
ジョリジョリと音をたてて、カミソリが陰毛を削いでいき、最終的にペニスが根元まで顕に露出する姿に俺は身震いをした。
「生えたらチクチクしちゃうかな」
尻の隙間にも刃を這わせ、俺は身体を強ばらせる。
綺麗に剃り終わると、康史は俺の頭を撫でる。

「トール、興奮してるね。顔が真っ赤。……珍しいね」
「そりゃ、つるつるにされたら、カッコつかねーし、恥ずかしいだろ」
両足は開脚してるし、俺を隠しているところはもう何一つない。

「そうだね。俺もトールにすごく、恥ずかしいこと沢山してあげたいな」







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