オレ達の日常

110

デートならもっとデートらしくした方がイイよなァ。俺は、雰囲気を作ったりとかするのは、よく分からないから苦手だ。
あ、そういや、去年波砂とのデート約束すっぽかして喧嘩してたのもバレンタインの日だったな。
それがバレたのが原因で、別れることになったんだっけ。
あんまり、バレンタインとかを意識したことなかったんだが、康史でさえ拗ねるくらいには、恋人同士には大事な日ってわけか。

特別な日とか、昔から意味がわかんねーなって思ってたしな。

暖かい店から外に出ると、マフラーは巻いてきたが風が少し強くて頬が冷たい。

「寒くねーか?」

手袋をしていない康史の手を握ると、ちょっとビックリした顔をして、俺を見返す。
リングを買おうって言った時もすげえ驚いてたしな。
まー、こういう時じゃねーと、こういうのは一緒に探せないし。
やっぱりずっとして欲しいから、俺のセンスではなくて康史の趣味にあわせたい。
ちょっと頬を紅潮させて、俺の前を歩く康史は本当に可愛い。
顔は綺麗った方が分かりやすいんだろうけど、表情は本当に可愛く見えるんだよな。

「大丈夫、大丈夫、、、、」

振り返ろうとしたようだが、康史はふと歩みを止めた。
俺にも、康史が足を止めた理由はすぐに分かった。

ったく、静かにたまにはデートさせて欲しいんだけどな。
馬に蹴られて死んじまえだ。
大体人数は、7人、か8人か。
東高かなァ。黒い制服に赤いライン、うっとおしい。

ちょっと、最近奴らに俺は容赦ができなくなっている。
髪の毛も黒くしたのに、しつけーやつら。
面倒くさいけど、後がやっかいだしさらっと片付けるか。

「見ない顔だけど、この辺東高の陣地だって知ってる?通行料とるけど」

ちょっとイキがった感じの短ラン、プリン頭が俺のまえに出てくる。
あー、もしかして髪の毛染めたから、俺だと分かられてない系?
康史は、制服を見て僅かに身を引いて構える。
引くとからしくないけど、あんなことがあった後だしなァ。
「シラネ。通行料とか…………普通の道デショ」
それに、楽しいデートの最中なんだけど。
「ふざけてんのか、兄ちゃん。俺たちは、東高の……グヘッ」
とりあえずうるさいので、みなまで言わさず殴って沈める。
ざわりと周りがイキリたつのが分かる。
あと、6人。

「だいたい、道路だぜ?高速道路しか通行料とっちゃダメじゃない?まあ、俺ら徒歩だけどさ」
「テメェ、何ぬかしてんだ」
分かりやすい動きで、腹ごなしにもならない。
2人まとめて殴り倒すと、1人が俺に気がついたように指をさす。
「お、オマエ、ハセガワ!?」
「年上に呼び捨ては良くないんじゃない?」
2年ということは、カバンに律儀に書いてあるクラスでよくわかる。

「トール、人来た。逃げるぞ」
グイッと康史は俺の腕を引いて駆け出す。

こんなに、いつも派手に暴れても、警察沙汰にならないのはひとえに康史の引き際の良さのおかげだ。
俺は、康史の手を繋いで走って逃げる。

いつもの日常の続きが、今はとても貴重で嬉しかった。
Copyright 2005- (c) 2018 SATOSHI IKEDA All rights reserved.

-Powered by 小説HTMLの小人さん-