オレ達の日常

105

学科と実地が終わるとさすがに夕方になっちまう。
合宿とかならもっと早く取れるんだろうけど、記憶をなくしたまんまの康史を置いては合宿などにはいけない。
やっぱり誕生日までに取ろうと思うと、最速を考えてギッチリ詰め込むしかない。
せっかく自主登校でいちんち中ゆっくりすごせるっていうのに、ぐったりだ。
それにMPのほうがすっかり0だなァ。
もう少し早く通えば良かったんだけど、追試とかまあ諸々あったしな。

HPは、ありあまってて問題ねえんだけどな。
康史はまだ記憶がねえって言ってっし、いつもより遠慮してるのは分かる。
だからっつって、俺もマゾでもねえからなー。
自分からあーしよう、こーしようとか提案なんてできねえ。つか、わざわざしたくねえし。
大体、俺から誘わなきゃ手ェ出してこねえってのも、康史らしくなくて、どーも調子狂う。
最初が、アレだったから、あんまし普通っていうのも元々なかったからかもしれねえけどさ。

バイクから降りて鍵を引っこ抜くと、ふっと夕暮れを見上げる。
部屋に帰るといつもうまい夕飯が待っている。
こんな、いい生活できてるのは、全部康史のおかけだ。
それにアイツが作れば、いつもなんでもうめーんだけどな。

「たっでえまァ」

玄関に入ると、でけえスニーカーが置いてある。
このでかい靴は、きっと誠士がきてんだな。
どこにも出んじゃねえって言ったから、することもねえだろうし、誠士くらいしかダチもいねーしな。
部屋に入ると、ソファーに誠士が座って、俺の狩ゲームをやっているようだ。

康史は、キッチンで飯を作っている。

「オカエリ、トール。今日はミートスパとサラダ作ってから、待っといて」

明るく聞こえる康史の声にほっとして、俺は誠士の横にどかりと座って、ゲームを返せと手をだす。

「誕生日までにとれそうか。……オマエ、俺、恐竜今狩ってんだろ?待てよ」
誠士がゲームから手を離さないので、手持ち無沙汰に転がっているハンドグリップを手にして軽く握りしめる。
「おー、運転だけなら問題ねえよ。学科も、まあ、覚えるだけだろうしな。記憶力だけはあるんだ」
「そりゃ知ってるけどさ、時間かかっちまうようなら康史も外でねえの厳しいだろうし。俺も、そろそろ大学の部活に顔を出さないとなんねーからさ」
誠士は、ぽてちを口に運びながらちょっと考えこんで、ゲームのスイッチを切って俺の膝に載せる。
外に出るなっていうのは難しいか。

「まあ、誠士が暇な時でいいし、外いくときは、一緒に行ってやってくれ。報復にちょろちょろきてるからさ」
「過保護すぎるとも思うけど、まあ、実際狙われたわけだからな……」
康史だって、いままではそこまで過保護にするなとか言ったもんだが、あの時のことだけは思い出したといっていただけあって、素直に言うことを聞いている。
あんな大人数でくることはねえだろうし、こないだ再会した同小だったシロの話だと世代交代のネタにされているだけのようだからな。

「あ、付き合い始めのキッカケ言っちまったよ」

「はぁああ?」

セージの言葉に、俺は裏返った声をあげた。
まあ、確かに話したことであのことを思い出すんじゃないかって杞憂ももうないんだけどな。
ちっと気まずいなァ。
いや、うーん、俺が気まずがるのもおかしい話だけどな。
「……まあ、康史も悩んでるみてえだからよ、いろいろ聞いてやんなよ」
「そりゃあなァ……セックスもフツーだしな」
「って、オマエの感覚のフツーがもはや信用できねえけどな………」
セージは、ちらちらとキッチンのヤスを伺いながら声を潜める。
「俺的には、すげえ体は楽なんだけどな」
「何、その言い方は、ちょっとものたりねえとか?随分とやらしい子になっちゃって」
からかうようにおもしろがって言う誠士の頬を軽く叩いて、俺は頭の上で手を組んだ。

まあ、確かにものたりないっていやあ、なーんかものたりねえんだけどな。

「おまえらー、メシ、できたよ、なーに2人でコソコソ話してんだよ」

「ンー、東流の恐竜の狩の仕方が多彩になったなーっていうね」
「……色々とバリエーションをとりいれないとな…………」

誤魔化すようにいうと、腰をあげてダイニングテーブルに向かった。

誠士が夕飯時を食って帰った後、なんとなく空気が重くて気まずい雰囲気になってしまった。

俺は気をそらすためにソファーへと移ってタバコを吸ってぼんやりとテレビを見ていた。
誠士が、夏休みのことを話したと言っていたから、それを康史のことだからひきずっているのかもしれない。
まあ、気にしてたのもあるし、俺も言いにくくて話を逸らしてしまって、そのままにしちまったので仕方がない。

「トール、あのさ、誠士から聞いた。俺、最初はトールのこと、無理矢理……だっ……たって……」
康史は、さっそく俺の前にコーラを置いて、つまみのポテチをテーブルの真ん中に置くと、俺の隣に腰をおろす。
今更、そんなこと言われてもなあ。
すっかり済んだ話で蒸し返すもんでもないだろうが、康史にとっては重要なことだろう。
どう返したらいいんだろうな。
「…………ま、殴られてスタンガンやクスリも使われたし、無理矢理だったかもしれねーけどよ。まあ、そんで、イヤなら今ここにいねーんだから、こまけえ話、気にしてんじゃねぇよ」
タバコを灰皿に押し付けて、康史の肩を抱き寄せる。
「細かくなんかねえよ…………」
まだ記憶がねーから、色々不安になっちまってるんだろうな。
どんな風に付き合ったかなんて、ホントにロマンティックなもんなんかカケラもなんもない。
でも、俺がココにいる、それ以外の理由なんかないだろ。

「それとさ、トール、俺たちどんなセックスしてたんだ?こないだも、あんなに無理させたのにもっともっとって思っちまうんだ」

こてんと頭を俺の胸元に押し付けてくる仕草が、不安気で可愛くて仕方ない。
今までされたことに比べたら、あんなの無理に入らないのだが、誠士にも言われたように、俺たちの普通はもはや普通じゃないかもしれない。

「ヤスの好きなようにしていいんだぜ。まあ、動けるようには加減はしてくれっとありがてーけどさ。頑丈だから、大体のことは問題ねーよ」
「昨日の我慢できないって顔のトールは、すっごく可愛かったな。あーゆうのたまんなくなっちゃうな」
へらりと笑う康史の顔は、俺を好きだとこころから言っていて安心する。
柔らかい茶色の髪を指先ですいて、俺は目を伏せる。

そういや、康史はハメ撮りとかを結構してたような気がする。
意識がある時は消せって言えたけど、頭ぶっとんでて、消せって言えない時も結構あったし。
俺は、視線を康史の携帯に向ける。
「あ、俺らがどんな風にしてたか、多分あん中に残ってんじゃないか。パスワードとかはわかんねーけど」
康史は無造作に携帯を手にすると、タンタンとタップして、弄りまわしはじめる。
しばらく画面をいじりまわしてじっと画面を見ていたが、俺を欲情したような目で見上げてくる。

「ん?なんだよ」

「こんなことしても、本当にいいの?」

画面を覗きこむと、目隠しされてM字開脚でバイブとプジーぶっさされて顔射後のひどく朦朧としきった俺の画像が映っている。
結構きれいに撮れてるなとか感心して眺めていると、携帯をテーブルに置いて康史は俺の上に跨ってくる。

「こんなにされてるの見せられたら、たまらないよ。ヤッたのが自分かもしれないけど、記憶がないから、嫉妬でおかしくなりそうだ」

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