オレ達の日常※sideY
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勉強をしたほうがいいんだろうなとも思うのだが、なんだか体がかったるくてどうにも動く気分にはなれなかった。
確かに記憶がおかしくなっているんだから、まったくの平常ってわけではないんだろうけどな。
誠士もなんだかんだ話をしながら、一緒にいたのだけど、そろそろ寝るからかえると行って部屋を出て行った。
二人からこの1年の話は聞いたのだが、まだ、現実として受け止めきれていない。
とりあえず意識だけでもハッキリさせようと、今はシャワーを浴びている。
ちょっとだけ、俺の記憶より鏡に映る自分の顔が大人びては見える。頬が少し腫れ上がっているのは、殴られたのか。
東流が一緒にいて、俺の顔に被害がでるだなんて珍しい。初めてかもしれない。
やっぱり、嘘じゃなく記憶がとんじまってるんだな。
鏡でみると、腕と足に見たことのない擦過傷と縄目の痕がある。
………。
……………。
マジか…………。
まさか東流のやつ、なんていうか、そういう趣味だったのか。
俺は、はっきりいってそういう趣味だってことを自覚してるが、縛られるよりも縛る方がスキだった。趣旨替えにしては180度ちがうのは、ちょっと。
まあ、自分のことだ東流にやりてえって言われたら、多分イイヨって言っちまうんだろうな。
それくらいに、俺は東流をガキの時から好きだ。
ずっと太陽のような存在で、ずっと恋焦がれてた存在。
それが、いきなりオマエは俺のだなんていわれてみろ。
心臓はバクバクしてとまんねえし、本当にこれが夢でないのか不思議で仕方がない。
でもセックスはしてたんだよな……。
腰から下の下半身が、ジンジンと熱をもって痛んでいる。
結構、東流は、思っているよりも激しいのかもしれない。
あんまり性欲なさそうで、だからAVとか見せてオナニーでもしねえかなって下心で部屋に呼んだりもしたけど。
情弱の東流のことだし、俺のAVが基準になってるとか。
さっきも激しかったから、体力なかったとか言ってたけど、このことだったのか。
そう考えると、なんだな身体が途端に火照ってくる。
でもな、俺はずっと東流のことを抱きたいと思っていたんだけどな。
やっぱ、俺じゃマウントはとれねえよな。まあ、好きなヤツと交わってるってだけでそんだけで幸せなんだろうけどさ。
ざっぱんと浴槽に浸かると体の擦り傷からヒリヒリとしみるがあったかくて心地いい。
なんか、すげえ疲れてるみたいだ。
ねむた、くなる。
「ヤス、風呂で寝てるなって……あぶね……溺れンぞ」
気がつかずに眠りこけてたようで、心配そうな東流の顔が入ってくる。
「……ん……なんか、疲れてたみたい。……だいじょうぶ……だから」
「っぶ、ねェ、な、のぼせてんじゃねえか」
ばさっと出ようとした瞬間ふらつく体を、東流はぐっと支えて抱きとめ、そのまま俺を抱き上げてバスタオルで包んで浴室を出る。
「トール?ゴメン、大丈夫だって」
「記憶、戻ってねえんだしさ……。…………病院、いくか?」
ぐっと顔を覗き込まれて、思わず首を横に振った。
「……そこまでじゃないとおもう、頭が痛いとかもないし……」
ベッドに俺をおろして、スエットの上下を甲斐甲斐しく着せてくれる様子は、傲岸不遜ないつもの東流らしくはない。
「受験前なのに、俺が目を離したせいで……。本当に勉強の方は大丈夫なのか?」
目を離した?
ああ、だから顔を殴られたのか。
「あさってだっけ、今から焦っても仕方ねえでしょ。予備校には明日いくし」
「送っていくから。予備校の場所も忘れてんだろ?」
確かに予備校にいってた記憶はないから、予備校の場所もわからない。
「うん。アリガトウ。大丈夫だから、トールもそろそろ帰ったら?夕飯前に帰らないと西覇怒るだろ?」
「あ……アノヨ……」
東流はベッドの淵に腰掛けて俺をじっと眺めて、寂しそうにため息をついた。
離れたくないとか、そんな可愛いこと言い出すのかな。
若干期待に満ちた目を向けると、東流は体をひょいっと動かして俺の横に寝そべる。
「俺、今、オマエとここに住んでるから……帰らない」
真面目な顔でそう言う東流に、嘘は見えなかった。
え…………。
マジでか……。
って、東流と一緒に暮らしてるのかよ。
ホント、この一年で何があったんだ、俺らに。
なんだか、すごくうまく行き過ぎている話すぎて不安になる。
「二人で暮らしてるの?」
こくりと、東流はすぐに頷いた。
あまり変わりばえしない自分の部屋だが、確かに少し家具が増えている気がする。
部屋のはしっこに、見慣れないサンドバックもある。これは東流のもんだろう。
ベッドヘッドの隅には、首輪と鎖とオトナのオモチャも積んである。
てか、そんなの出しっぱなしとか、普通しまっとくだろ……、相当東流と付き合えて浮き足立ってるんだな、俺よ……。
「トール、腹減った?」
「ンー、誠士の持ってきたんで足りてる………だいじょうぶ」
いつも傍若無人な東流の様子が、なんだか少し変だと思える。
俺はごろっと場所を移動して東流の傍によると、おそるおそる腕を伸ばしかける。
今までなら、絶対にできなかった。
俺の行動に少し眉をあげて、東流ふっと笑って腕をひくとぐっと抱き寄せて俺の頭を自分の胸に抱きこむ。
「俺もオマエのモンなんだから、遠慮すんじゃねえよ。今日は勉強しねえのか?」
「今、勉強どころじゃないから……」
鼓動が、頭の上まで突き抜けそうだ。
こんな不安な気持ちでいっぱいなのに、欲情しまくって下半身が熱くなっている。
ただこうやって抱きしめられているだけなのに。
「へへ……勃ってンな。……ヨカッタ」
するっと腕を伸ばされて、東流は大胆に俺の股間に触れて形を確かめる。
「ちょ、ちょ…待って、トール……」
「忘れてても、俺にちんこ反応ちゃんとするなって、安心した」
へらっと笑って俺の息子さんをゆっくりと大きな掌でなでまわす。
そりゃ当然だろ。
俺は、東流に心のそこから惚れてんだってのに。この鈍感野郎が。
というか、亀頭あたりを指先でぐりぐりされたら、もうビンビンでたまらない。
「……ンなに、さわんねえで……」
中途半端にされると、辛くなる。
好きなヤツにそんなことされるだけで、たまらなくなる。
「あ、悪ィ。安心したら、ついつい。忘れちまったら、って思ったら焦っちまった、コイツはちゃんと責任もつぜ」
ニッと人の悪そうな表情を浮かべて俺のスエットの下をずるっと引きおろすと、ぱくんと俺のペニスを唇へ銜えて舌をからめて舐め始めた。
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