オレ達の失敗 *SIDE Y

32

「うーん、学校かァ、夏休み、あっちゅうまだったよなァ」
盛大な欠伸をしつつ、鞄を派手に振り回しながら東流は隣の俺を見やってかったるそうにダラダラと歩いている。
今日からは新学期である。
制服のシャツをいつもは全開にしている東流は、今日はしっかり上までボタンを留めている。
首筋にかなり痕つけちゃったのもあるし、ちくびピアスは透けるだろうな。
「まあな、俺もケガして動けなかったし、あれからトールも寝込んだもんな。こないだ花火大会行けたのがラッキーだったくらい」
俺は、東流の隣、一歩後ろくらいのペースを保ちながら合わせて歩く。ここが、いつもの俺の定位置。
「俺の体力も無限じゃねェんだよ。無茶ばっかすんなよ」
「いや、無限に近いとこはあるかと思うけど」
肩を揺らしながら笑い、チョットまだひきずるが、もう杖は使わずに歩いていかく。
「はよう。お二人さん、こないだは花火大会の合コンセッティングありがとな。すげえ楽しかったあ」
誠士が後ろからバタバタと駆け寄ってきて、割り込むように声をかけてくる。
あの日の恩返しに合コンを開いたが、2人でトイレにしけこんだので誠士にとってはほぼハーレム状態といってよかった。
「お、セージ、ハヨォ。その後、ミカちゃんとはうまく行ったのか?」
花火大会の間中、雰囲気の良かった相手と誠士のことをさぐるように東流は聞き出そうとする。
「まあな、付き合うってとこまではいってないけど。今週はデートの約束あるんだ」
うれしそうな笑顔全開の誠士に、にやっと嬉しそうに東流は笑う。
その後、撮ったデーターを元にあのチームの男達に脅しをかけ、ついでに警察沙汰にならないように骨を折ってくれたのは誠士だった。
自分が一番困るから動いたというのもあったのだろうが、二人はこの親友に恩を感じていたのである。
「そりゃあ、何より」
ぽんっと肩をたたいて、東流はがんばれーと声をかける。
「オマエらも部屋でセックスばっかしてんじゃねえよ」
「えー、デートにいい思い出ねェしなァ」
「しばらくはトラウマだから、俺たち」
からからと笑いつつ、東流を見やると、東流は思案するように少し空を見上げる。
からっと晴れた夏の終わり。
雲ひとつない青空
「でも天気イイからなー。もったいねェから、週末どっかいくか、ヤス」
「どこいくの?公園で青姦もイイヨね」
提案に願望をくわえて返すと、東流は肘でエルボーを食らわせてくる。
「あおか……っ、ヤス、マジ変態過ぎンだろ」
呆れたようにぼやく東流の様子に、まんざらでもないんだろうなと思う。
ん、今週末は公演かなー。
「だーかーらー、てめえら、セックスばっかしてんじゃねえってのっ」
けらけらと笑う二人の間に、誠士の突っ込む声だけが響き渡っていた。


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