オレ達の失敗 *SIDE S

28

「日高君たち遅いねー」
ツインテールの可愛らしいミカちゃんは、俺とメアドとラインを交換してスマホをもって首を傾げる。
うーん、女の子って可愛くていいにおいするよな。
ホント神様仏様日高様、アリガトー。セージ君慣れない喧嘩がんばってした甲斐ありました。
しかも、あの二人は男一人置いて勝手に消えてくれやがりました。
なんてハーレム。ハーレムはいいんだが、なんとなく居心地が悪い。
「人が多いからね。あいつらのことだから、どっかで喧嘩になっちまってるかもしれね」
大方、二人で花火をあげまくってるんだろうけど。
あいつら、ホント飽きもせずセックスばっかししてやがる。
ずっと康史が東流の浴衣姿をみてそわそわしてたのも、気づいていた。
ちっとは自重っていう言葉しらねえのか。
「あー長谷川君いるもんね。日高君も絡まれやすいけど」
女子は俺の言い分に納得してくれているので、問題はないんだが。
「よくも悪くも目立つからね、あの二人」
「野口君は付き合い長いの」
「ん。中二からかな、仲良くなったのは」
中二のクラス替えで、俺が東流と同じクラスになったのがきっかけだった。
思えば、あの時から康史はきっと東流に恋してたんだろうな。
今になってみるとわかることがたくさんある。
「野口君は空手の国体選手だし、二人より強いんじゃない」
「まさか。康史はまだしも、東流には勝つ気はしないよ」
多分、どんな技を繰り出してもかわされてしまう気がする。
ふっと昔の思い出を思い出しかけたとき、二人が並んで手にわたあめを持って戻ってきた。
なんで、二人してわたあめなんだ……。突っ込み要素はいっぱいあったが、東流の目許が僅かに赤い。
あいつら……。今さらだが、今さらだが、やっぱりセックスしてやがった。
「悪ィ、ちっと絡まれちゃって。」
「そんなんじゃないかと思ったよ、つか、花火終わっちゃったぜ」
康史のうそに合わせつつ、なんだかフェロモン垂れ流しになっている東流へと歩み寄る。
「お疲れさん。なんでわたあめ?」
「ガキんとき、わたあめってなんか高級で食えなかったからよ…」
顔を見やると、うっすらと涎の跡とか涙の後が残っている。
あーあ、色々されちゃったのね。分かりやすくて仕方が無い。
俺は、ハンカチを東流へ押し付ける。そのうちぬぐうだろう。
「なーんか、トールのやつ熱出したっぽくて。送ってくから今日は解散ってことで。2次会いくやつは誠士んちで」
「ばっ、二次会会場こねえのに勝手にきめんな」
思わず突っ込みをいれつつ、女の子たちもそれじゃあねと帰っていった。
ミカちゃんの連絡先を聞けたので俺はラッキーだったが。
「楽しめた?途中でごめんな、見てのとおりトールが我慢できねえみたい」
「ちょ……今、俺のせいにした?」
我慢できないのは本当のようで、眉をよせた表情が切なそうにゆがんで色っぽい。
いや、ダチを色っぽいと思うのは、それはそれで間違っているのだが。
「ん。ミカちゃんとうまくいきそうだよ。アリガトウ。」
康史に笑いかけると、背中をとんっと叩かれる。
「よっしゃ、そろってリア充がんばんぜ」
「ぶっ、ハイハイ。んじゃ、俺も帰るぜ。東流も無理すんなよー」
手を振って、わたあめを手に幸せそうに寄り添って歩いていく姿を見送った。

明日も、あっつくなりそうだ。
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