オレ達の失敗

26

「こんばんわ、長谷川君も来たんだね。あんまり合コンとかこないイメージだったよ」
ポニーテールの女が俺の隣に寄ってきて、もの珍しそうな表情で顔をあげてみてくる。
イメージねェ。
「……あァ……初めてだ」
イメージどおりと思われるのも嫌だが、川べりのフェンスに凭れ掛かり、花火大会の会場である河川敷にちらと視線を走らせる。
ヤス目当ての女ばっかりは気分が悪いな。
セージはツインテールの小さめの女の子と仲良くなったらしく、同じくフェンスにもたれて談笑してる。
「喧嘩強いって有名だよね。喧嘩好きなの?」
「……別に……」
話すことも、どうでもよさそうに答えると、女はむきになったように一生懸命俺に絡もうとしてくる。
やっぱし面倒くせえな。
「なんか思ってたのと違うね、もっと武勇伝とか語っちゃうタイプだと思ったよ」
「話すのは、苦手だ」
武勇伝とか語れるほど、俺は人と話すのは得意じゃない。
ヤスとセージしかダチもいねえし、派閥も作っていない。
「ホント、そうみたいだね。硬派っていうのよね。」
「あれ、玲奈ちゃんと仲良くなれたの?トール」
別の子と話していたヤスが割り込んでくる、
「ン……わからん」
「ぶ、玲奈ちゃん、気にしねえでね。トール、頭の中も筋肉だから」
俺の背中にさりげなく腕を回して腰にまきつけてくる。
「……ひでえな、ちっとは色々考えてるぜ」
唇を尖らせて文句を言うと、ニヤッと笑い返される。
「何を?」
「……いや……何も考えてねえけど」
何とか聞かれて切り替えせずおたつくと、その様子に玲奈って女はおかしそうに笑う。
「ふふふ、なんか二人漫才みたい。息がピッタリ。幼馴染なんだよね」
「いっつも一緒だったからね。何でも知ってる」
ヤスは自慢げに言って俺のケツをここぞとばかりに撫で回す。
ひゅううっと音がして、振り返ると夜の空に満開の花火が散る。
玲奈という女は俺の横ですごーいと歓声をあげている。
密着したヤスは俺の腰をぐっと寄せる。
女たちは気づいていないようだが、俺は内心バクバクものだった。
ヤスは俺の様子に調子に乗ったのか帯の合わせ目から手を内側に差し込んでくる。
「……幼稚園から高校までずっと一緒だ」
なんとか相槌のように言葉を返すと、彼女はうらやましそうな表情になる。
「そうなんだ。すごいねー、そんなに長く続く友達って、私にはいないかも…あ、みて、ナイアガラ」
ざざざっと光の粒が川に向けて流れ落ちる。
光が舞い散るような綺麗な光景に俺は目を細めた。
「トール、ちっとトイレいきてえ」
ヤスは俺の股間を撫でながら、もう片方の腕を引く。
オマエには情緒とかないんだろうか、ヤス。
「え、花火、いいのかよ」
「俺の花火が暴発しそう」
耳元でささやかれ、俺は顔まで熱くなる。
「一緒にいってあげて。日高君一人じゃ絡まれて帰ってこれなくなるだろうから」
玲奈は絡まれやすいヤスの体質を知っているのか俺に頼んでくる。
二人でいったらいったで、多分俺が無事じゃねえだろうけども。
「わかった……じゃあ、セージにはそういといて」
俺の花火も暴発しそうだなあとか考えながら、俺はヤスの腕を引いた。
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