オレ達の失敗
25
セージへの恩返しというわけで、ヤスが夏祭り合コンを企画した。
俺は行く気ねえって言ったけど、やっぱり、女たちとヤスが遊ぶのはなんとなく気分が悪いので一緒に行くことにした。
ヤスはヤスでデート気分だと言って、浴衣をプレゼントしてくれた。
後ろに淡い水色の龍が入った白い浴衣で、渋くてカッコいい柄である。
ヤスの浴衣は、真っ赤に金糸の入った見た目からしてチャラい浴衣なのだが、どうしたことかヤスが着るとしっくりと決まって可愛い。
隣を歩いているが、引き締まった細い腰に巻かれた格子の帯がまた、可愛くて仕方がない。
俺は本当にヤスのことが好きなんだなと心から思う。
「ハセガワ、祭り行くンかい」
目の前をふさぐ様にやってくる喧嘩相手に俺は眉を寄せた。
また、せっかくのデートを邪魔しねえでくれねえかなァ。
瞬殺すっけど、浴衣汚れちまうからなァ。あんまり暴れるのは嫌だなァ。
「あァ、折角キメてっから今日は喧嘩しない子なンよ、俺」
「ハハハ。俺らも、花火楽しみだから、ハセガワとは遊ばないつもり。病院から花火みれんしなァ」
軽く断ると相手も今日は構える気はないらしい。
「あ、ちゃんと断れたんだ。トール偉いね」
ヤスはわっしゃわっしゃと手を伸ばして俺の頭を撫でる。
「相変わらず、日高はイケメンだあね。じゃあ、イイ夏休みすごしとけェ」
ぞろぞろと柄の悪い男達は、俺の前から立ち去る。
つうっても、俺もその100倍柄は悪いだろう。
ちらちらと屋台で何か焼いてるにいちゃんたちの熱い視線が気になってしまう。
「俺よりトールのほうがイケメンだけどね。ホント、トールは超かっけえよ」
「……マジ、照れっから、言うな」
ヤスは扇子で風を仰ぎつつ俺を上目遣いに見上げる。
「やほーっ。東流、康史。二人でたってるとホント目立つよね。何そのオーラ」
セージは紺のジンベエにでっけえ団扇を片手にこっちに向かって歩いてくる。
合コン企画は俺らのセージのための慰労会である。
かなり世話になったのもあるが、俺ら二人でリア充を満喫するには、やっぱりセージもリア充にさせないとならんという、ヤスの心意気である。
まあ、確かにダチ二人でくっついたら、ちっともの寂しい仲間はずれの気分かもしれないがな。
「強そうだろ」
俺は胸をはっていって見ると、セージはぷっと吹き出して笑う。
「ぶっは…いやあ、東流はいつも強そうだから。っつか、セクシーオーラだしまくりって言いたかったんだが」
「ちょ、誠士、セクシーとかどんな了見だ」
しっしっとを追い払おうとする康史に、ぶんぶんとセージは首を振る。
「待て、オマエとちげえから。俺は女の子がスキだっての。間違ってもこの筋肉バカには興味ねえですから」
「筋肉バカァ?……まあ…あたってなくもねえけども…」
「認めてどうすんだ、この天然筋肉が」
二人に同時に突っ込まれる。
なんだかんだ、俺は三人でいるこの空気も気に入っている。
「日高君、お待たせ」
っとそこに、3人の浴衣姿の女子が現れた。
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