オレ達の失敗

21

通販で頼んだものが来たんだと、ヤスは上機嫌で俺の目の前にソレを並べ始めた。
つか、通販でコイツは何注文してるんだ。21
明らかに大人のオモチャ的なものいっぱいと、キラキラ光る綺麗なピアス。
「本当に、トールは俺に全部くれるっていうの?」
コイツの趣味はわかっている。分かった上で、イイヨと言ったのだが、目の前に見せられるとちょっとは躊躇う。
躊躇うが、一度決めたものを曲げるわけはない。
それに……。
俺は机のはじっこにおいてあるピアスを手にとる。
幾何学的な模様が彫ってあり、馬蹄になっていてカッコイイ。
「全部ヤんよ」
俺が、つけられちまったピアスを外したい気持ちでいっぱいなのをきっと汲んでくれた。
いつも、ヤスはそうだ。
いつでも、俺の気持ちを先回りしてくれる。
ヤスになら、全部やっちまってもイイ。
何されても構わねェ。
「これ全部使っていいのか」
「どう使うんか想像つかねェけど、イイヨ。何でもしてやるし、何されてもイイ」
目の前に並んだ何かわからない器具を手にとって、面白い形してるなと眺める。
「もー、かなわねえな。トールは本当に男前すぎ」
「それは褒めてるンか」
綺麗でたまらなく好きな顔に、俺はにっと笑って見せる。
「じゃ、脱いで」
「っつっても、俺、ランニングとパンツしか着てねえぞ」
裸と殆ど変わらない姿の自分を見やり、肩を竦ませ器具を机の上に置くとぱぱっと全裸になってやる。
「え……まって、トール。ちょっと恥ずかしがるとかそういうのないの」
逆に慌てたような顔をするヤスに、俺は首を傾げる。
「別に恥ずかしくねえ」
「……そ、そうか」
ちょっと残念そうな表情のヤスに、何かやっちまったかなと思い首を傾げる。
特に今の行動に、問題ねえよな。
「あーと、何か違った?」
「いや。トールが……どうしたら恥ずかしがってくれるかなとか」
ちょっと言いにくそうに、俺を眺めてヤスは俺の腰に腕を絡める。
「恥ずかしがったらいいのか」
言われていることが分からず、俺はどうしようかと考える。
恥ずかしいことか。
そういうことを求められるとは思わなかった。
考えあぐねていると、ヤスはぐいっと俺の体を抱きしめる。
「トールが考えなくてもいいんだ。トールが潔すぎるからさ」
目線ひとつ下に見えるヤスの頭に俺はあごをごつんと乗せた。
「大丈夫、トールが恥ずかしがるようなこと、俺いっぱいするから」
そうか。
うーん。
「それって、大丈夫っていうのか」
「とりあえず、ピアス変えようね。ベッドに座って」
腕を解いて微笑むヤスに俺は頷いて、ベッドに腰を下ろす。
ヤスは救急箱から消毒液をもってくるとピアスをきゅっきゅっと拭いて、俺の乳首をつまむように触れる。
「ちょっとひっかかると痛いかも。ちゃんと穴に通るように刺すけど…」
「へーきだ。痛くても」
へっと笑って見せると、ヤスはきゅっと乳首をつまむ指先に力を篭める。
きゅっとピアスを引き抜き、新しいピアスの針を刺し込む。
「――ッ……うう…」
少しだけひっかかったのか、ビリビリっと脳天をつくような痛みと痺れが背筋を走る。
殴られるより、こういう痛みのほうがクる。
ヤスは唇をちろっと舐めて、興奮したような表情を見せる。
ホントに俺が辛そうな顔をするのが好きみたいだな。
「可愛いよ、トール。もう片方ね」
つけていたピアスを、きゅっと外すとわざとらしく、今度はヤスは刺す穴から外してつつく。
「!!!っく…ッ…は……外すなよ…」
「トールが可愛いからいじめたくなっちゃった」
へらっと笑いつつ、ひくひくと痙攣する俺の頬を撫でて微笑む。
その笑顔を見て、こんな目にあっているのにそれでもまーいいやって思える。
こいつが満足するなら、俺はこんなこと別に問題ない。
「もう一個、俺のためにピアスあけてくれる?」
手のひらに乳首につけたのと同じピアスを載せて、俺の股間あたりを見つめる。
俺は、痛みに少し霞んだ視界の中で微笑むヤスに頷いた。
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