オレ達の失敗 *SIDE S

12

「誰を狙ってンのかなァ?」
背後からがつんと怪しさ満点で隠れていた男が来ているチームのジャケットを確認し、まるで怪我などしていないかのように鮮やかに松葉杖を振り回してぶちのめす。
康史に倒された男を俺は木陰に引きずりこんで乗ってきたバンヘと載せる。
確かに非戦闘員でいいとは言われたが、これは犯罪の片棒担ぎまくりだよな。間違っても見つかるわけにはいかない。
深々とため息をついて、俺はあたりを見回しながら敵を探す様子を眺める。
怪我してるからってかばう必要ないだろ、こいつは。東流が過保護すぎる。
ガツガツと周りの敵を殴り倒し、全員バンに詰め込んで爽やかなイケメンフェイスに笑顔を見せる。
テニスとかちょっとした運動しちゃったアイドルみたいな顔してなにしてんだ、こいつは。
「おーわっり。セージいてよかったぜ。松葉杖つきながら、拉致できねえもんなあ」
「襲われても返り討ちできるよなあ、どう考えても東流がオマエの実力を甘く見過ぎてんじゃないか?」
バンの後ろに荷物を詰め込み、気を失ってる男らを眺めて、俺はしみじみとつぶやいた。
「んな、弱々だったらトールのそばにはいらんねえでしょ。でも、トールより弱いからね。較べる基準が自分より強いかどうかだから、アイツは。でも、ほら、守られるのって嬉しいしな。今回は裏目に出ちまったけど」
悔しそうに握り拳を握る康史に、俺はバンの助手席の扉をあけてやりながら肩を叩く。
まあ、東流ほどの強いヤツは滅多にいない。
自分基準の強さのバロメーターもわかる。
だけど、大事なものは間違えてんなよ、と、思うし言ってやりたい。
非戦闘員だって、相談してくれりゃ力になれるってのに。
「無理はすんなよ。ある程度は力を貸すからな」
けが人戦わせるよりは戦力になれそうだけど。
「ああ、アリガトな。トール、無事かな……リンチされて殺されてはないかな」
不安そうな顔をする康史に、東流なり大丈夫だと返して運転席に乗り込み、車を廃校へと向かわせた。
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