トールとヤス

オレ達の喪失 *SIDE Y

媚薬入りのローションを纏わせた指で、拡げるようにアナルの内側を解しながら奥におし進めると、意識のないトールの唇から熱い吐息とともに鼻にかかった喘ぎが漏れ出す。
内壁へと擦り込まれた液体のせいで、内側から熱が侵食していっているのがわかる。
開かせた内股は痙攣するようにひくひくと震え、オンナのようにもじもじと腰が揺れ始めるのがわかった。
意識が戻ったら、トールはどうするのだろう。
俺を罵倒して憎むだろうか。
ビニールテープでぎゅうぎゅうに縛ったけれど、トールは底が見えないほどの怪力の持ち主だ。
油断したら、すぐに引きちぎって逃げるだろう。
そして、きっと俺を許さない。
「トール……好きだよ」
意識のない耳元で囁きながら、開いた唇を舐めてゆっくりと吸い上げる。
焦がれるほどみつめ続けた唇を、やっと吸い上げた歓喜に何度も吸っては舐め、舌で吐息ごと舌を絡めとる。
くちゅくちゅと指先が動くのにあわせて、水音が漏れて呼吸がせわしなくなっていく。
腰を掴んで指を増やして奥を穿つ。
足の指先がつんと反り返り、感じ初めているのか、背筋がぶるぶると震えだす。
どんなに好きだったかなんて、分からないだろうし、分かられることなんかきっとこない。
そう考えると、苦しくて残酷なキモチになっていく。
このまま、快感に狂って俺だけを見てくれればいいと思う。
「……う…ッはあ……っんんんッ……っ!!!」
びゅくっと体が跳ねて、精子が腹部へと吐き出される。
驚いたようにカッと見開かれた目は、信じることができないように揺れて俺をじっと見ている。

終わった。

もう終わったのだ。
暖かいだけだったこの関係は終わった。だから壊すしかない。
もう壊すしか残っていないのだ。

俺は、トールを永遠に喪失したのだ。
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